第79話 移転
剣術の稽古が終わったところで朝食。
このとき、またレンカさんのマジックバッグが活躍した。
……そう! アツアツの料理を出すっていう活躍だね!!
まあ、僕のマジックバッグだって素晴らしい容量なんだけど、レンカさんのはそれを遥かに上回るし、時間停止も付与されてるからね……圧倒的なんだよ……
い、いや、別にそこまでうらやましいってわけじゃないよ?
僕の持ってるやつだって、じゅうぶん過ぎるぐらいの逸品なんだからさ!
ただ、純粋にレンカさんは凄いなって思う気持ちがあるだけ、本当にそれだけなんだ。
そして話は変わるけど、オーク肉について一つ。
それは、ルクルゴさんの前でオーク肉を食べるのは気が引けるよねって話なんだけど……ルクルゴさんとしては、気にしなくていいよって感じらしい。
いわゆる弱肉強食ってことみたい。
……とはいえ、ルクルゴさん的にはオッケーでも、こっちが申し訳ない気持ちになっちゃうので、どうしても食べる物がないってとき以外は、なるべくなら控えるようにしようと思う。
そんなこんなで朝食が終わったところで、本格的にオークたちの集落移転が始まる。
そこで、僕とレンカさん……あと、ルクルゴさんも移転先まで同行する。
まあね、移転先がどこか分からないと、人間族が脅威を感じるような場所かどうかってが判断できないだろうからね。
それにしても……さすがオークというべきか、パワーが凄いね。
重そうな荷物も軽々と持ち運んでいるんだ。
うん……やはりオークたちの、あの逞しい肉体には、筋肉がみっちりと詰まっているんだろうね……
でもまあ、それはそうだろう……オークと戦闘するとき、しっかりとした剣じゃないと、筋肉等の分厚さに阻まれてまともに斬れないもんね……
フフッ……その点、父さんやご先祖様たちから受け継いだ……この僕たち一族の剣は特別だからね!
まあ、結局のところ、僕が「ミートボーイ」とか呼ばれる程度にモンスターをガンガン狩れるのも、この剣のおかげって部分が大きいだろうし……
そしてたぶん……ルクルゴさんとの手合わせで僕が見せた力っていうのも、この剣が貸してくれた力なんだと思う。
というのも、昨日のルクルゴさんとの手合わせがきっかけだったのだろう……なんというか、壁を越えたっていう感覚があるんだよね。
もしくは、この剣との親和性が高まったっていうか、秘められた力みたいなものを感じるんだ。
それをさっきの剣術稽古を通して実感した。
森の中を歩きながら、そんなことを考えていると……
「……さっきの稽古のことを思い出していたのか?」
「えっ? ええ、まあ……」
「ノクト君にとって、あの手合わせはとても大きな経験だったのだろうな……さっきの稽古、まさに見違えるほどだったよ」
「そ、そうですか……でも、魔力に目覚めるとかっていうのは、残念ながらなかったみたいですけどね……」
「いやいや、何も魔力だけが全てじゃないさ……それとは違う、でも凄い力がノクト君にはあるんだよ、きっとね」
そういって微笑むレンカさんは、この上なく美しかった……
そして僕の心は温かさで満たされるのだった……
……あ、そういえば……ゴージュさんたちの集落移転を見届けて、街に帰れば依頼が終わりになるんだね。
それはつまり、レンカさんと組んだ臨時パーティーの解消ってことだ……
嗚呼……寂しいなぁ……
「……急に浮かない顔をして、どうした? もしや! 危険なモンスターの気配でも察知したか!?」
「あ、いえ! ……その、力ってことに関して、こうして見てるとオークたちの腕力って凄いじゃないですか? やっぱりその秘密は体格にあるのかなって思うと……僕もこれから大きくなれるのかなって、ちょっと心配になりまして……」
おっと、いけない……レンカさんに余計な心配をかけたくないからね!
とりあえず、その前に考えていたオークのパワーについての話題を出して、ごまかすことにした。
とはいっても、これから成人に向かって成長していくにあたって、僕の身体がデカくなってくれるかっていうのは、とっても重要な関心事でもあるけどさ!!
今だって、まだ子供だから仕方ないにしても、レンカさんより小さいし……
まあ、だからこそ、レンカさんも僕を一人前の男扱いしてないんだろうけどね……うぅ、悲しいね……
「ふふっ……心配しなくても、ノクト君は大きくなれるよ………………まあ、小さいままでも、それはそれでかわいいと思うが……」
「えっ?」
「……まあその! だからな! とにかくノクト君は、何も心配せず! 日々の生活を思うとおりに送ればいいということだ!!」
「は、はあ……そうですか……分かりました」
「うむ! それでいい!!」
なんか、唐突なレンカさんの勢いに押された格好だった……
とかなんとかいっているうちに、移転を予定していた場所に到着したようだ。
いやぁ……途中で会話とかしながらだったので、そこまで厳しい道のりってほどでもなかったけど……それなりに長い距離を歩いた。
また、移動中に出現した他種族のモンスターについては、ゴージュさんが率いる部隊がキッチリと対応して、移動に支障はなかった。
ちなみに、その戦闘に僕たちは参加せず、見守るのみ。
まあ、どうしても危険そうな場合のみ手を貸すつもりだったが、その必要もなかった。
この様子なら、ゴージュさんもいい感じでサットワーズというオークの集落を運営していけそうだなって感じだよ。
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