第77話 その覚悟はあるのか?

「なるほど……そうだろうと思わないでもなかったが、やはりだったか……」

「えっと、レンカさん……分かってたんですか?」

「ああ、特に部下たちの必死な様子でな……なんとなく察したよ」

「そ、そうですか……」


 ルクルゴさんが、僕の従者となってついて来るって言い出したことを、レンカさんに説明した。

 するとレンカさんは、それを既に感じ取っていたようだ……マジか……

 勘がいいというか、なんというか……って感じだね。


「……それで、ルクルゴといったか……ノクト君の従者となるのであれば、忠誠を誓うことになるわけだが……その覚悟はあるのか?」

「あ、えっと、レンカさんは……」

『ノクト殿を我が主君と決めた、その心に偽りはない』

「えぇっ!! レンカさんの言葉が分かったの!?」

「その覚悟、くれぐれも忘れないように」

「え、えっ!? レンカさんもなの!?」

『……ああ、いや、ノクト殿……レンカ殿の言葉そのものは分からぬが、その心は理解できたのだ』

「あ、そうだったんですね……?」

「大事なことだったからな……言葉ではなく、心で通じ合ったのだろう」

「へ、へぇ、レンカさんもですか……なんというか、そういうものなんですね?」


 心で通じ合うって……なんか凄いこといってるよ……

 でもまあ、僕もルクルゴさん以外のオークたちの言葉を、雰囲気などを頼りに脳内で補完しながら聞いてたからね……もしかしたら、そんな感じなのかもしれない。


「……さて、そういうことであれば、これからノクト君は冒険者ギルドでモンスターテイマーと登録するのがいいだろう……そして、テイムの証として、ルクルゴはこれを首から下げておいたほうがいいな」


 そういいながら、レンカさんはマジックバッグから首飾りを1つ取り出した。

 それはテイムを示す紋章が刻まれただけで、飽きのこないシンプルなデザインって感じだ。

 まあ、あんまり奇抜なデザインだと、鬱陶しくなっちゃうかもしれないからね。

 ……おっと、ここは通訳が必要かな?


「えっと、人間族の決まりで……僕がモンスターテイマーとなって、ルクルゴさんがテイムされたってことにして、その首飾りを身に付ける必要があるみたいです……すいません……」

『相分かった……そして、それが人間族のルールであるなら、ノクト殿が謝る必要はないよ』

「あ、はい、どうも……」


 そういいながらルクルゴさんは、レンカさんから首飾りを受け取り、身に付けるのだった。

 ……っていうか、あれッ!?

 なんか気が付けば、自然にスイスイ話が進んじゃってるけど! ホントにこのまま行くの!?

 しかも、レンカさんも普通にテイムの証である首飾りを出してきたけど! なんでそんな用意がいいの!?

 ねぇ! なんでぇ!?


『どうだろう……似合っているかな?』

「ブゴッ!」(イケてます!)

「ブゴゴッ!」(そうですとも!)

「ブゴゴォ、ブゴゴッ!!」(ルクルゴ様なら、なんでも似合います!!)

「ブゴブゴゴォ……ブゴッ!」(そんなもん認めたくねぇけど……カッコいいっス!!)

「……」(これで本当に、ルクルゴ様は遠い所へ行ってしまわれるのだな……)


 実際のところ、モンスターからしたら屈辱の証かもしれないっていうのに……

 それでも、ルクルゴさんは覚悟を決めているということか……

 これは僕もピーピーいってられないかもしれないね……


「そしてあとは、オークの集落についてだな……ノクト君、もっと森の奥のほうに移動できないか聞いてみてくれないか? 一応、私からも冒険者ギルド等に掛け合ってみようと思うが、あの場所だと人間族の領域に近いからな……どうしても脅威と認識されてしまうんだ……」

「はい、分かりました、聞いてみます」


 というわけで、言葉の通じるルクルゴさんに話して、ゴージュさんたちにこちらの意思を伝えてもらうことにした。


『……ふむ、そのことについてなら、心配いらないだろう』

「えっ? そうなんですか?」

『そうとも、実のところ予言はノクト殿のことだけではなくてな……あの場所に集落を構えていると、そのうち人間族に限らず様々な種族から猛烈に侵攻を受けるようになっていくらしい……半信半疑ながらも、その予言を受けてから今まで移動先を探すなど準備を始めていた……そして本当に予言の子が現れたら、それをタイミングとして移動を開始するつもりだったということだ』

「あ、そうだったんですね……?」

『ああ、それでこうしてノクト殿が現れたということは、予言が正しかったということ……そして、次に来るのは異種族による侵攻……つまり、今が移動するときということだな』

「な、なるほど……」


 オークの長老が残したという予言……なんだか凄いね……

 でも、そういうことなら、よかったかもしれない……

 もう、今さらルクルゴさんの仲間たちと戦う気にはなれないからさ……

 というか……もう、オーク肉は食べられないね……それはちょっと残念かな……

 とはいえ、オークだけが美味しいお肉じゃないもんね!

 新たな美味しいモンスターを求めて、僕も次のステージに向かうときがきたってことなんだ!!

 ……とその前に、レンカさんにルクルゴさんの話を通訳しなきゃだね。

 どうやら、さっきみたいには理解できていないみたいだからさ……

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