第76話 お前になら、あとを託すことができる

「ブゴッ!?」(えぇっ!?)

「ブゴ! ブゴゴ!!」(そんな! ルクルゴ様!!)

「ブゴッ! ブゴゴォォ……」(どうか! 思い留まってくださいよぉ……)

「ブゴォッ! ブゴゴッ!!」(そんなことッ! 俺は認めねぇッ!!)

「……」(引き止めたいが、ルクルゴ様の意思を尊重せねば……)

『……お前たちの気持ちは嬉しくもあるが、これは予言によって定められたことだ』

「ブゴッ! ブゴブゴゴッ!?」(予言なんて! 無視すればいいじゃないですか!?)

「ブゴゴ!!」(そうですよ!!)

「ブゴォ……ブゴゴォ……」(嗚呼……ルクルゴ様……)

「ブゴッ! ブゴッブゴゴォッ!!」(頼むよ! 俺たちを置いてかないでくれッ!!)

「……」(ぐくっ……ここは我慢だ……)

『……それにな、ノクト殿がこれから何を為すのか……それを傍で見届けるのが、私自身楽しみでもあるのだ』

「「「「ブゴォ……」」」」(ルクルゴ様ぁ……)

「……」(ルクルゴ様を心配させぬよう……気持ちよく旅立てるよう……自分だけでも、この悲しみに耐えて気丈に振る舞って見せる……!!)


 ルクルゴさんの衝撃的な発言に対して、僕も思いっきり騒ぎたいところだったけど……

 それよりも、周りのオークたちが早く大きく反応したので、先を越されたなぁ……なんて思いつつ、今はそれを黙って見守っている。

 そしてやっぱりルクルゴさん以外の言葉は理解できないので、雰囲気的にこんなことをいってるんじゃないかなって脳内で補完しながら聞いているって感じ。

 でも、たぶんだけど、そんなに大きく外してないんじゃないかな?

 まあ、ルクルゴさんのセリフが理解できるからこそって感じだけどね……

 しかしながら、レンカさんはオーク語をフルで聞いているわけだからね……完全に雰囲気で察するしかないってところだろうか……

 そう思いつつ、チラリとレンカさんに視線を向けてみると……


「……私なりに、彼らが大事なことを話しているのだろうということは想像できるが……あとで説明してくれると助かるよ……とりあえず今は、彼らの邪魔をせず、話に集中させてやろう」

「……そうですね、分かりました」


 ……レンカさんはどこまで想像しているかなぁ?

 ルクルゴさん……僕の従者になるっていってるんだけど……それを聞いてビックリしないでくださいね?


『してゴージュよ……お前になら、あとを託すことができる……サットワーズのこと、よろしく頼んだぞ?』

「……ブゴッ!」(……御意ッ!)


 ……そのときだった。

 ルクルゴさんにゴージュと呼ばれていたオークナイト。

 そして、今までずっと無言を貫き耐えていたオークナイト。

 そんなオークナイトの身体から、まばゆい光が溢れ出した。


「えぇっ? 一体何事?」

「ほう? あれはもしや……」

「……えっと、もしかしてレンカさん……何が起こっているのか分かります?」

「私も話に聞いたことがあるだけで確証はないが……おそらく、あれは進化だろう……」

「し、進化ですとぉ!? あれが……まさか……」

「ふむ……どうやら本格的に始まったようだ……」

「え……えっ?」


 レンカさんのいうとおりというべきか……ゴージュさんの筋肉……いやそれだけじゃない、身体全体がモリモリと盛り上がっていく!

 そんな肉体の成長に耐え切れなくなったのか、装備していた鎧がはじけ飛ぶ!!

 うわぁ、今のシーン……ヤバカッコいい……

 あの「バキバキィン!!」っていう感じ……僕もやってみたい……

 そうして、それまでのナイトボディから一回りデカくなって、だいたいルクルゴさんと同じぐらいのサイズになった。

 しかし、それで輝きは収まらず、ゴージュさんの身体を覆うように鎧が出現し、全身を固めていく。

 へぇ……あの鎧って、進化する際のサービスとして手に入るんだ、いいなぁ……

 僕なんか、お金を出して買ったっていうのにさ……

 あ、そういえば、ルクルゴさん……上半身の鎧が、肩から胸にかけてぐらいしか残ってないけど……もしかして、僕のせい?

 だって、僕との手合わせで重傷を負ったんでしょ? そのとき壊れたんじゃないの?

 あ、マズい……弁償しなきゃかも……

 最初に見たときルクルゴさんが装備していた鎧……それまでに激闘を重ねた結果か、それなりに傷はついていた……でも、まだまだ現役って感じでガッチリしていたように見えたからね……たぶん、まだ買い替えの時期じゃなかったハズ……

 あちゃ~僕の貯金で足りるかなぁ?

 ほら、ゴージュさんの新しいピッカピカの鎧を見てごらんよ……なかなかの高級品っぽいよ?

 しかも、サイズ! ルクルゴさんの身体を覆うことができる鎧となったら、いったいどれだけの金属が必要なのって感じだよ……

 というか、僕なんてまだ金属じゃなくて革鎧だよ?

 いや、金属の鎧だと、僕には重過ぎるかもしれないけどさ……

 そんなことを思っているうちに、ゴージュさんの進化が完了したみたいだね。


「……うん、まだルクルゴさんほどじゃないけど……貫禄がついたね」

「ふむ、オークジェネラルに昇進したてといったところか……」

『……よしよし! これでますます心配がなくなった!!』

「ブゴッ!」(期待に応えて見せます!)


 ……もしかしたらと思ったけど……ゴージュさんの言葉は理解できなかった……残念。

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