第61話 これが私の戦い方
レンカさんとの顔合わせは……僕が一方的に緊張しそうだなってこと以外は、特にこれといって問題はなかった。
それから、改めて今回の依頼についての説明も受けた。
まあ、結局のところ「オークの集落を潰して来てね」という一言に集約されるんだろうけど、そこに至るまでの計画とかを含めた説明だね。
そしてこの依頼は、もともとほかの街で出されていた依頼なので、当然のことながら目的地も今僕たちがいる街から離れている。
そこで一度、向こうの街まで移動することになる。
その点について、僕はこの街で冒険者になってから遠くに遠征したことがないので、ちょっとドキドキである。
ああ、以前ゴブリンの集落を潰したことはあったけど、日帰りできる距離だったからね……遠出してないんだ。
とはいえ、ホツエン村からこの街に来ただけあって、まったく長距離を移動した経験がないってわけじゃないけどさ。
また、今回ほかの街へ向かう際、ギルドで馬車を用意してもらえるので移動にお金がかからない……これはラッキーだね!
そんな感じで、日程の説明なんかも受けたところでギルドの建物内での顔合わせは終わった。
では、そのあと何をするかっていうと……お互いの実力を見せ合う。
当然というべきか、同じランク内でも上下で実力差がそれなりにあるからね……
それで、相手が自分の想定していたレベルと違った……なんてことがあったらマズいので、そういった認識のギャップを埋めるために実力を見せ合うことにしたわけだ。
あと、基本的な戦闘スタイルも知っておく必要があるし。
……なんてカッコいい感じでいってみたけど、レンカさんレベルの人からしたら、僕の剣術はただ剣を振り回しているだけにしか見えないかもしれないけどさ。
ま、それも含めて、どんなもんか見てもらうってわけだね。
そんなこんなで、レンカさんと2人で街の周りに広がる森に入った。
ここで、モンスターとの戦いぶりを見せ合うわけだが、基本的にお互い手出し無用で、何か問題があった場合のみ手を貸してもらうって感じ。
「では、先にノクト君の腕前を見せてもらうとしよう」
「はい、分かりました!」
こうして、いつもとほとんど変わらないモンスター狩りを始める。
そしてモンスターの気配を探ってみるが……ふむ、ここから右斜め前方に少し進んだ辺りにゴブリンの集団がいるな。
とりあえず、奴らと一戦かますとしようかな?
「……右斜め前方にゴブリンの集団の気配があるので、そちらに向かってみたいと思います」
「そうか」
そう一声かけたところで、ジギムに隠形ごっこ……ああ、あとから隠形訓練に名称変更したんだっけ、とにかくそのとき鍛えさせられた隠形を駆使して、ゴブリンの集団に接近する。
そして、奴らが気付かないまま……
「……ッ!」
「……ギャ……?」
「ギッ? ギャッ……」
「ギギッ!? ギャギャ……ッ……!」
「ギャギィ! ギ……ッ!!」
まずはゴブリンを5体、斬った。
そしてササッと討伐証明部位をカットして、次へ向かう。
まあ、本来の目的はオークになるわけだからね、ここでのんびりするわけにもいかない。
こんな感じでオークの気配を探りつつ、その途中にいるモンスターも狩りながら進む。
そうしてしばしの時間が過ぎ、ようやくオークの気配をつかんだ。
「ここからまっすぐ進んだところで、ようやくオークに会えそうです」
「……私の手はいるか?」
「いえ、あの程度なら問題ありません」
「分かった」
気配の数は6……それぐらいを狩るのに手を借りていたら、とってもじゃないがオークの集落を掃討などできないだろう。
それに、もっとたくさんを相手にしたことだって何度もあるし。
そんなこんなで、先ほどのゴブリンの集団と同じように、オークの集団も狩っていく。
まあ、内容的にほぼ変わらずで、モンスターの種類が変わっただけって感じ。
そして倒し終われば……マジックバッグにイン!
「……なるほど、素晴らしい腕前だ」
「いえいえ、それほどでも……」
「いや、誇るに値するよ……さて、君の実力はだいたい見せてもらったことだし、ここからは私が見せるとしよう」
「分かりました、それではお任せします」
「ああ、任された」
というわけで、ここからはレンカさんの戦いぶりを見せてもらうとしよう。
そして、僕にも応用可能な技術があれば、ぜひともマネさせてもらいたいところだ。
なんて思っていたけど……ほとんど無理っぽい。
というのが、レンカさん……魔法を多用なさるのだ。
まあ、やっぱりというか、お貴族様か魔力持ちの平民だったってことだね。
それで僕みたいな普通の冒険者だと、一生懸命モンスターの気配を探るんだけど……レンカさんは魔力探知とかいう魔法でササッと見つけちゃうんだよね……正直、便利でいいなって思っちゃう。
また、モンスターとの戦闘でも、攻撃魔法をご使用なさるわけだが……これも凄い。
特に遠距離からウインドカッターという風の刃を飛ばしてモンスターを倒していた姿は、ただただカッコよかった……マジで!
もうね、その戦いぶりを見て、僕は一瞬でレンカさんのファンになっちゃったね!!
ああ、もちろんだけど、接近戦もお強くていらっしゃる。
そして僕が参考にする余地があるとすれば、この接近戦部分だね。
でも、技術レベルがレンカさんのほうが圧倒的に上だということが見ただけで分かっちゃった……
ま、まあね! だからこそ、見て学ぶんだよ!!
そう、これは僕の伸びしろなんだ!!
「……とまあ、これが私の戦い方だが、どうだろう?」
「はいっ! 最高の上に最高、まさに究極でした!!」
「そ、そうか……ありがとう」
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