第60話 大丈夫かな?

 今日は~ハーシィさんが見つけて来てくれた~冒険者と顔合わせの日なのさ~イェイ!

 というわけで、早朝の剣術稽古と朝食を済ませ、テンションアゲアゲで冒険者ギルドに向かう。

 さぁ~て、どんな人かなぁ?

 それでね、正直「えっ!?」って感じなんだけど……ハーシィさんの話では、見つかったのはソロ冒険者なんだってさ。

 いやいや、なんていうか……「いいの? それで?」って感じ。

 でもまあ、オークの集落掃討の依頼が出ていることを知った日、あそこにいた冒険者たちの反応的に、なかなか受注者が集まんないだろうなって感じはしていたからね……

 だからこそ僕も半分諦めて、領軍に任せることになりそうかなって思っていたわけだし。

 そんなふうに考えると、むしろ1人でも受注者がいただけ快挙といえるかもしれない。

 それに、ハーシィさんがオッケーと判断するぐらいだから、おそらく実力のほうもピカイチなんだろう。

 う~ん、それだけの実力者ということは……やっぱりヨテヅさんみたいに強面で……さらにゴリッゴリのマッチョマンなのかなぁ?

 といいつつ、ヨテヅさんは顔に似合わず戦闘タイプって感じじゃないけどさ……あと、そこまで極端にムッキムキってわけでもないし……

 まあ、それはそれとして……やっぱりね、見た目にも強そうな人のほうが安心感っていうのは自然と湧いてくるもんだからね……そんな感じのオッチャンを期待したいところではある。

 加えていうなら、オークジェネラルを単独で討伐できる腕前ってことだろうから、ぜひともその戦いぶりから学ばせてもらいたいところだ。

 なんて思っているうちに、冒険者ギルドの建物に到着。

 そうしてドキドキワクワクした気持ちを抱えながら建物に入り、受付へ向かう。


「おはようございます、ハーシィさん!」

「おはよう、ノクト君」


 どっちかっていうと、ハーシィさんのほうが先に声をかけてくれる割合のほうが高いんだけど、今日は僕のほうが先だった。

 まあね、それぐらい期待感でいっぱいってことだね。


「今回組むことになる冒険者の方はまだ来ていないから、ノクト君を先に部屋に案内するわね?」

「はいっ! よろしくお願いします!!」


 まあ、待ち合わせの時間にはまだまだだからね、お相手が遅刻したってわけじゃない……僕が早過ぎたのさ。


「それじゃあ、この部屋で待っててね?」

「はいっ! かしこまりました!!」

「ふふっ、元気いっぱいね?」

「はいっ! それはもう!!」


 そうしてハーシィさんは、顔合わせのために用意された部屋から出て行った。

 いやぁ~この待つ時間っていうのは、なかなかにドキドキしちゃうなぁ~

 ……おっと、あんまりキャッキャしてたら「こんなガキが一緒で大丈夫か……」とかお相手に思われてしまうかもしれない……それどころか、役立たずとみなされて軽んじられるかもしれない……

 よし、ここはシブくキメとかないとね!

 シブい顔……シブい顔……

 ちなみに、つい最近雑貨屋で手鏡も購入したので、目で確認しながらシブい顔を作れる……フフッ、これでダメ出しされずに済むはず!!

 そうこうしているうちに、ドアをノックする音が聞こえてきた。

 よっしゃ、声もシブい感じを意識してっと……


「……どうぞ」


 そして、ハーシィさんと一緒に部屋に入ってきたのは……女性!?

 え、えっと……まあ、比較的人数は少ないものの、女性の冒険者だっているわけだからね……おかしくはないよ……うん。

 でもね……僕の頭の中では、すっかりゴリッゴリのマッチョマンなオッチャンがやってくることになってたからさ……ちょっと面食らうって感じ。

 なんて僕が軽く戸惑いつつも、顔合わせは進み始める。


「紹介いたします……こちら、Dランク冒険者のノクト君です」

「……よろしく、お願いします!」

「ああ」


 あぶないあぶない……挨拶できないガキだと思われちゃマズいもんね……


「それからノクト君……こちらは、Cランク冒険者のレンカさんよ」

「よろしく」

「はいっ! こちらこそ!!」


 それにしても、Cランクかぁ……僕の父さんと同じだね!

 でも、見た感じ成人はしてそうだけど……まだまだ若そう……20歳にもなってないんじゃないかな?

 若くしてCランク……となると、お貴族様だったり? それとも、魔力持ちの平民かな?

 なんて思いながら、失礼にならない程度にレンカさんを見ていると……はて、どっかで会ったことがあるような?


「あの、失礼ですが……どこかでお会いしませんでしたか?」

「……? いや、初対面だ」

「あ、そうですか……すいません」

「いや、気にしなくていい」

「まあ、同じ冒険者なのだし、街の中で知らず知らずのうちにすれ違っていて……それがノクト君の記憶に残っていたのかもしれないわね?」

「はい、そうかもしれませんね」

「うむ」


 ……ハーシィさんのフォローがありがたい。

 というか、この短い時間のやりとりによって思ったことだけど、レンカさんって……いわゆるクールビューティーってやつだろうか?

 なんというか「凛とした美しさ」をこの上なく体現した女性って感じで、すっごく美人なんだ!

 ただね、美人なんだけど……あんまり喋る感じじゃなさそう……

 そして、これから依頼で行動を共にするわけだけど……美しさと無口さで、すっごく緊張しそうだよ……僕、大丈夫かな?

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