第59話 合同でやろうねって感じ

 結局ハーシィさんに説得されて、オークの集落を掃討するって依頼の受注は保留となった。

 いや、保留というか、ほかの冒険者と合同でやろうねって感じで、ハーシィさんが一緒に受けるほかの冒険者を探してくれることになった。

 僕としては、ぶっちゃけソロでいける気がしていたのだけど、ハーシィさんが強く止めるので、いうことを聞いておいた。

 まあね、こういうところで変にごねて、その後の信頼関係を崩すのも得策じゃないだろうし?

 なんて思いつつ宿屋に戻り、しばしのくつろぎのあと、夕食をいただく。

 そして今日も、ヨテヅさんとササラさん夫妻が食堂に来てくれたわけだが……


「……ノクト、今日はギルドかどっかでなんかあったか?」

「えっ? なんで?」

「若干……不服そうな気持ちが顔に出ている」

「えぇ~っ? こんな爽やかフェイスマンの僕が!?」

「ふふっ、ヨテヅさんはノクト君のことならなんでもお見通しだからねぇ」

「まあ、なんでもというわけじゃないが……それで、どうなんだ?」

「う~ん、そうだねぇ……」


 そこで、僕の顔が不服そうになっていた原因であろう、先ほどのオークの集落を掃討するって依頼の話をヨテヅさんたちにした。


「……こんのアホノクト! それはギルドの姉ちゃんのいうことが正しいッ!!」

「うっ……」

「そうねぇ……ノクト君のことを信じてないわけじゃないけれど、それでもやっぱり心配になるわ」

「お前なぁ……おおかた他領の街が壊滅したって話が心に強く影響してるんだろうけど、焦り過ぎだ……それにオークジェネラルだと? しかも1度も戦った経験がないときた……悪いことはいわない、一回落ち着け」

「はい……」


 楽しい食事タイムから、急遽説教タイムへと変わってしまった……

 でもまあ、確かにヨテヅさんたちのいうとおりだからね……


「……まあ、冒険者ってのは自分の判断が何より優先されるんだろうが……とりあえず今回については、ギルドの姉ちゃんが組んで大丈夫だって思える冒険者が現れるまで、その依頼はやめといたほうがいいな……それに領軍が動く可能性があるってんなら、なおさらな」

「そうね、私もそのほうがいいと思うわ」

「はい……」


 まあ、もともとハーシィさんのいうことを聞くつもりではあったが、ヨテヅさんたちにまでいわれたとなれば、いよいよもって納得するしかない。

 そんな感じで夕食を終え、ヨテヅさんたちは家に帰り、僕は部屋に戻る。


「ふぅ~む……僕もちょっと調子に乗ってた部分があったかもしれないね……」


 ナイトやマジシャンじゃ物足りない……そんな気持ちが、僕を増長させていたのだろうか……

 そして取り返しのつかない失敗をする前に、ここでみんなに止めてもらえてよかったのかもしれない。


「焦りは禁物……よし! ここでいったん、気を引き締め直そう!!」


 ま! あとはハーシィさんがどんな冒険者を見つけて来てくれるか次第でもあるね!!

 それで誰もいないってなったら、おとなしく領軍に任せるとしよう。

 それによく考えたら、領軍はそれぞれの街に配備されているんだから……ホツエン村のように見捨てられたりはしない気もするしさ……


「さて、明日も早いし……そろそろ寝よう! たっぷり睡眠をとって、元気いっぱいで明日も頑張ろう!!」


 そんな掛け声とともに布団にもぐり……おやすみなさい……


………………

…………

……


 その後、オークの集落掃討の依頼うんぬんはともかくとして、これを機会に遠征用の道具をそろえることにした。

 まあ、せっかくマジックバッグもあることだからね! 荷物なんかいくらあっても問題なしさ!!

 それにといってはなんだけど、マジックバッグを手に入れてから稼ぐ効率もよくなったからね、遠征用の道具をそろえる資金もじゅうぶんあるんだ。

 フフッ、それでね……ここは奮発して! ハイヤン魔道具店で見た、障壁魔法の展開装置が付いたテントを買っちゃおうと思うワケ!!

 まあね、どうしたって寝てるあいだは無防備になっちゃうからね……その対策にって感じ。

 ちなみに、僕みたいに自由自在に魔力を使えない冒険者用に、魔石式の物が売られているからありがたいもんだよね。

 そしてこの魔石だけど、普通の石が魔力を蓄えて魔石化するなど、自然発生的に地面に転がってることもあるみたいだけど、どっちかっていうとモンスターの体内にあるやつを取り出して回収するのが普通って感じかな?

 まあ、弱いモンスターだと、魔石がちっちゃ過ぎて「どこ?」って感じになったりするけどね……

 それで、一晩中障壁魔法を展開できる魔石となると安くはないんだけど、僕の場合は地味にオークの魔石を結構持ってるからね! それが使えてラッキーって感じさ!!

 とまあ、そんな感じでテントだけでなく、いろいろな野営道具をそろえたりして「いつでも遠征に行けるよ!」って状態にしておいた。

 そしてもちろん、年齢が高めの……お姉さん錬金術師が経営しているお店でポーションを買うことも忘れていない。

 フフッ……準備万端とはまさにこのことさ!

 とかなんとかやってるうちに3日が経ち、ハーシィさんから一緒に受ける冒険者が見つかったとの連絡を受けた……ついにって感じだね!

 はてさて、これからどんな冒険者を紹介されるのか……楽しみだねぇ。

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