第62話 憧れ
森でお互いの実力を確認し終えて、街に戻ってきた。
そして実力の確認だけとはいえ、それなりの数のモンスターを討伐したので、その素材を冒険者ギルドへ引取に出す。
また、当然というべきか、レンカさんはマジックバッグを持っていた……それも僕の物より大容量のやつをね!
これによって、レンカさんはお貴族様説がより強まったといえるかもしれない。
とはいえ「Cランクともなれば、これぐらい当たり前でしょ?」といえなくもないので、まだ確定とまではいえないだろう。
ま! レンカさんがお貴族様かどうかってことには関係なく、ランクや年齢などいろいろな面で上なので、失礼のないように接するべきことに変わりはないよね!!
そんなことを思いつつ、ギルドの受付へ向かう。
「お帰りなさい、お2人とも臨時のパーティーとして、これから上手くやっていけそうでしたか?」
「ああ、問題ない」
「そうですか、よかったです……ノクト君はどうかしら?」
「はいっ! レンカさんはとっても素晴らしい実力を持った方なので、僕はただただ足を引っ張らないよう、全力でついていこうと思います!!」
「そう、頑張ってね」
「はいっ! ありがとうございます!!」
「それでは、お2人の臨時パーティーとして、正式に依頼受注の手続きをさせていただきます」
「ああ、頼んだ」
「お願いします!」
まあ、ほぼほぼ決まっていたことではあるけど、実際に腕前を見てやっぱダメってこともあっただろうからね……そういう意味では、レンカさんに僕の実力を認めてもらえたようで嬉しい限りだよ。
それから、これも当然といえるだろうけど、パーティーのリーダーをレンカさんにお願いした。
フフッ……その辺のところ、僕も弁えているつもりではあるからね!
「それでは、見事依頼を達成され、無事に帰還されることを願っております」
「ああ、任せてくれ」
「お気遣いいただき、ありがとうございます!」
こうして手続きを終え、僕らは正式にパーティーとなった! 臨時だけどね!!
「さてノクト君、早速明日から移動を開始することになるわけだが……準備はできているかな?」
「はいっ! 遠征用の道具類などは全て、既にそろえてあります!!」
「結構……それでは、泊っている宿屋が違うようなので、今日のところは解散するとして、明日からよろしく頼んだ」
「はいっ! こちらこそ、よろしくお願いいたします!!」
「うむ……ああ、それと……あまり肩肘張らず、普通に接してくれていいからな?」
「えっ? あっ、はい! ありがとうございます!! ……とはいえ、これが僕の普通でもありますので……」
「そうか、ならいい……では、また明日」
「はい、また明日です!」
……まあ、僕としてもレンカさんみたいな美人を相手に緊張がないわけじゃないけど、それ以前に年長者……それも女性相手の接し方はなんとなく固定されてもいるからさ、急には変えられないって感じ?
ああ、年長者とはいっても、イジりやすそうなオッチャンの場合はちょっと違うかもしれないけどさ……
そういえば……最近はヨテヅさんのこともあんまりイジってないよなぁ……
まあ、ササラさんと結婚したからねぇ……ここだっていうイジりポイントがなくなっちゃったからでもあるけどさ。
「……おい、聞いたか? アイツら……あの依頼を受けるつもりらしいぞ?」
「2人だけとか、信じらんねぇよ……」
「でも、あの女……確か、Cランクだろ?」
「えっ! マジ!? あんな別嬪さんなのに!?」
「いや、顔と実力は関係ないだろ……」
「それはそれとして、あの人……魔法を使えるって聞いたことがある……」
「なんだ、貴族かよ……」
「さあ、その辺のところはよく分からんが……」
「どうせ『身分を隠して行動するワタクシ』っていう物語に憧れてる系だろ?」
「まあ、そういうのに憧れるトシゴロってのはあるだろうからなぁ……」
「分かる! 俺も昔は騎士とかに憧れたもんなぁ~」
「それっ! 男として生まれたなら、人生の中で少なくとも1回は憧れるやつだな!!」
そういえば、ジギムも騎士に憧れてた気がするなぁ……
まあ、ジギムの場合は騎士そのものっていうより、名を上げたいって気持ちのほうが強かったような気がしないでもないけど……
「正直なことをいえばさ……俺、いまだにちょっと憧れてんだよね……」
「まあ、別にいいんじゃねぇの? そういう夢を見てるからって、誰かが迷惑をするわけでもねぇし」
「つーか、まだ年齢制限に引っ掛かってないだろ? 今度受けてみりゃいいんじゃん!」
「ごめん、実は毎回受けて落ちてる……」
「そ、そうか……なんか、スマン……」
「いや、こっちこそスマンね……」
「……ま、まあ! それはともかくとしてだ!! この前、誰かが予言してたよな!?」
「予言って……何を?」
「ほら! あれだよ……『ミートボーイがオークの集落を壊滅させる』ってやつ!!」
「ああっ! それか!!」
「そういや、そんなことをいってる奴がいたな……」
「でも、そんときは『ソロ』っていってなかったか?」
「まあまあ、そんぐらいは誤差でしょ……」
「誤差って……まあいいけど……」
「とはいえ、ついにミートボーイもそこまでいったか……一体どこまでいくのかねぇ?」
「だなぁ……」
それはね、オーガを倒すまでだよ……なんて思いつつ、ギルドの建物を出るのだった。
さて、明日から遠征だ! 思いっきり頑張っちゃうぞ!!
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