第55話 ご活躍に期待しております

 冒険者ギルドの建物を出て、そのまま魔道具屋さんへ直行する。

 もう、気分はウッキウキ!

 というわけで、ハーシィさんに勧めてもらって何度か通っている魔道具屋さんへ到着。

 まあ、物凄く高い買い物だからね、信頼できる人に勧めてもらったお店が一番さ!

 それに、冒険者ギルドと提携していることもあって、何かあったときも安心!!

 なんて思いつつ、お店に入る。


「これはこれはノクトさん、いらっしゃいませ」

「どうもです」


 逸る気持ちを抑えて、冷静な雰囲気を保つようにしておく。

 そして実はまだ、ここで買い物をしたことはないけど、マジックバッグを見に何度か足を運んでいるためか、名前を覚えられていたりする。

 なんていうのかな、現物を見るたびごとに「マジックバッグを手に入れるんだぞ!」っていう目標を自分に強く深く印象付けるみたいな感じといえば伝わるだろうか……そうして休息日とかに見に来ていたのだ。

 あと、単純に魔道具っていうのが興味深いっていうのもあるね。

 まあ、それはともかくとして……早速マジックバッグを購入しよう!


「お金が貯まったので、マジックバッグを購入したいと思いまして……」

「おお、ついに成し遂げられましたか……おめでとうございます」


 僕がマジックバッグを欲していることは、当然のことながら店長さんも知っている。

 そうして、棚からマジックバッグを取り出してくれる。

 ちなみに、防犯上の意味合いから棚がガラス張りみたいになっていて、客が勝手に魔道具を触ることができないようになっている。

 まあ、ガラスっていうか透明な魔力の膜みたいなものだけどね。

 加えて、その棚も地味に魔道具だったりする……凄いなぁ。

 そんなことを思いながら店長さんがマジックバッグをカウンターに運んでくる姿を見ていたが……


「……あれっ? 店長さん……それ、僕が買おうとしてた容量のやつじゃないですよね……?」


 僕が買おうとしてたやつは、この店で一番安いやつ。

 それでも、小さな倉庫ぐらいの容量はあるので、オークの数体ぐらいなら収納可能だ。

 でも、店長さんが持ってきたのは、その10倍は容量があろうかといったマジックバッグ……運ぶ商品にもよるけど、行商ができそうなレベルだ。

 そんなの、僕の貯めてきたお金で買えるわけがない。


「はい、ですがこれでいいのです……もちろん、お代はそのままで結構です」

「えっ! えぇっ!? それって……でも、本当にいいんですか!?」


 一番安いマジックバッグの金額で、それよりずっとずっと高価なマジックバッグを売ってくれるという店長さん……信じられない。


「ノクトさんが初めて来店されてから今まで、かなり短期間で費用を貯められた、しかもその若さで……その将来性に投資するとでも思っていただければと思います」

「将来性に……投資?」

「ええ、うちにはまだまだたくさんの商品がありますので、これからも御贔屓にということですね」

「な、なるほど……」

「それから、先日Dランクに昇格されたとか……そのお祝いでもありますね」

「あれっ? いいましたっけ?」

「商売柄、そういった情報はすぐに集まってきますからね」

「そうなんですね……」


 確かに、冒険者の情報とかいろいろ持っててもおかしくはないかもしれない。

 それはそれとして……容量たっぷりなマジックバッグとか! メッチャ嬉しい!!

 店長さん! 男前過ぎるよ!!


「そんなわけでして、これからもノクトさんのご活躍に期待しております」

「あ、ありがとうございますっ!!」

「フフッ……そしてまた何か購入いただければ幸いです」

「はい! それはもう!!」


 まあね、魔導具なんて便利な物、いくらあってもいいからね!

 よぉ~し、これからガンガン稼いで! いろいろ買っちゃうぞォ!!

 そうして、店長さんにマジックバッグの所有者を魔力的に刻印してもらって、正式に僕専用のマジックバッグとなった。

 この魔力的に刻印っていうのは、僕固有の魔力の型を魔道具……この場合はマジックバッグに刻むことで、僕しか使えなくなるって感じ。

 これをしておかないと、盗まれたときそのまま中身を全て取り出されたりしてしまうからね。

 あと、魔力の型からマジックバッグを追跡することも可能らしいので、盗まれたときの安心感が違う。

 かといって、簡単に盗まれないよう気を付けなきゃいけないのは当たり前だね!

 それから、複数人で共用する場合はそういう刻印の仕方になるだろうし、むしろ専用とかじゃなくて誰でも使えるようにしたいんだったら、刻印しないって感じになるのかな?

 それで、本来ならこれも有料なんだけど、今回は特別に無料でサービスしてもらっちゃった!

 こういうことができるあたり、店長さんはお貴族様に連なるお方なのか、はたまたそういう魔法的な才能のある人ってことだね。

 ま! 能力のある人じゃなきゃ魔道具屋さんなんてとってもじゃないけどできないだろうからね!!

 そんな感じで、ホクホク笑顔のまま魔道具屋さんをあとにするのだった。

 こんなに男前な店長さんのいる「ハイヤン魔道具店」……あなたも一度訪れてみては? なんてね!!

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