第49話 そのあいだに僕は14歳になった
「ブゴォ!」
「そんな大振りじゃダメだね」
「ブッゴォッ!!」
「空振り続きで、頭に血が上ったかい?」
「ブゴォ! ブゴォッ!!」
「焦れば焦るほど……深みにはまっていくよ?」
「ブゴォッ! ブゴォォォォォォッ!!」
「……さて、この戦いもそろそろ終わりにしようか」
そんな言葉とともに、剣を一閃。
「……ッ……ゴォ……!?」
それがこのオークの、最期のセリフとなった。
「……フゥ、いっちょうあがりって感じかな?」
というわけで、1体のオークを討伐したのだった。
「……よっこいせっと……フゥ……戦闘よりも、こうやって持ち帰るほうがメチャクチャ大変なんだよねぇ……重いしさ……」
なんて、ボヤキが漏れてしまうが……
「……でも、でもでもでもぉ~? お肉、お肉っ! やほほのほ~い!!」
そうなのである! オークはお肉の塊ともいえる、すっごくありがたいモンスターなのである!!
いやぁ、よかったよかった!
そして街に来てからもう、2年が経過したってところかな?
そのあいだに僕は14歳になった。
今はソロで冒険者をしている。
また、モンスターもさらに活発化してきている。
ま、そのおかげもあって、そこまで森の深いところに入らなくてもオークというお肉の塊を狩ることができるってわけだね。
フフッ、その点についてだけはありがたいもんだね!
「フッフッフッ……毎日だって、お肉は食べ飽きないからねぇ!」
なんて、ルンルン気分のまま、街へと向かう。
まあね、お肉の塊だけあって、オーク1体でかなりの稼ぎになるからね。
それにというか、これ以上討伐したところで持ち帰れないからさ。
そんなわけで、最近はオークを1体討伐したところで帰るって感じ。
また、正直なことをいえば、複数のオークを同時に相手したとしても勝てる自信はある……あるんだけど、2体目以降を持ち帰れずにその場に放置することになるのがもったいないなって思ってね……
だからというべきか、なるべく単独行動のオークを狙って森を探している。
まあ、そういうロンリーオークを探すのに日々時間がかかってるって感じかな。
「……ハァ……早く……早くマジックバッグが欲しいなぁ……別に、お貴族様が持ってるような、大容量のやつじゃなくていいんだよ……オークをチョイっと収納できるぐらいのやつ……それぐらいでさ……」
なんて、またボヤキが漏れてしまったね。
マジックバッグ……ダンジョンでまれに手に入れることができるアイテム。
物によって容量は違うけど、とりあえず見た目からは信じられないぐらい荷物を入れることができる、ありがた~いアイテム。
まあ、そんなすんばらし~いアイテムだからね、需要が物凄く高くなっちゃうわけだね。
お貴族様はみんな当然のように、それも大容量で時間停止の付いたやつを持ってるだろうし……商人たちも必須だね。
ホツエン村にいた頃は、行商人のオッチャンが持っているのを見て「便利だね」ってぐらいにしか思わなかったんだけどねぇ……
今はこうやって重た~いオークを持ち運んでいると、マジックバッグが切実に欲しくなっちゃう。
それでまあ、僕が欲しいぐらいだから、こうやって森とかに入るような冒険者はみんな欲しいってわけだね。
だから、魔道具屋に置いてある一番安いやつでも、僕らからしたらメッチャ高額商品となっちゃうわけだ。
それで何がいいたいかというと……マジックバッグを買うためお金を貯めてるってことさ。
まあ、オークはギルドでなかなかステキな金額で引き取ってもらえるからね、自分で食べるぶんのお肉を残しても、貯金できるだけありがたい。
そうして日々オークを1体、また1体と倒していくうちに、マジックバッグに近付いているって感じだね。
そこで「食べるぶんも売ったら、もっと早く貯まるのでは?」と思われるかもしれない。
でもさ、人には日々の喜びってものが必要だと思うんだよ。
お肉を食べること……それこそが僕の生きる喜びなのだから……
ちなみに、同じお肉ってことで考えると、ホーンラビットも選択肢としてはあるんだろうけど……オークを狩れるようになった僕にはいろいろな面で物足りない。
まず、探すのもそれなりに苦労するし、オークほどのお肉の量でもないから、食べちゃったらほとんど稼ぎにならないし、何より味がね……オークのほうが濃厚なんだ。
だから、オークのお肉を食べたあとだと、ホーンラビットのお肉は淡泊だなって感じちゃう。
まあ、逆に「今日はアッサリとしたお肉を食べたいな」ってってときはホーンラビットのお肉でいいんだろうけどね。
……とまあ、そんな感じでお肉のことをアレコレ考えながら、街へ向かって進む。
もちろん、このとき周囲への警戒は怠っていない……ゴブリンなんかが襲ってくることもあるしさ。
そこで、こうやってオークを狩れる相手に襲いかかるゴブリンっていうのは、何を考えているんだろうって思わなくもない。
う~ん、実力差とかそういうのは関係なしで、戦闘本能みたいなもんがうずいちゃうのかね?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます