第43話 なかなか鮮やかなもんだな

 昨日、戦闘の講習を受けた。

 そして、装備やポーションもバッチリ整っている。

 ということはつまり……今日、本格的にモンスター狩りに挑戦するということだっ!!


「ノクト……もう、待ちきれないって感じだな?」

「うん、そうだね……僕自身、こんな自分に驚いているぐらいだよ」


 こういうキャラはジギムの役割だったはずなのになぁ。

 僕はどっちかっていうと、田舎でのんびりした生活を満喫するってタイプだったはず。

 そして、たまに村に帰ってくるジギムの武勇伝なんかを聞くのを楽しみにするって感じだっただろうになぁ……

 とはいえ、僕だって父さんの息子なんだからさ、もしかしたら潜在的な部分で武辺者だったのかもしれないけどね……

 そんなことを思いつつ、今日もヨテヅさんと早朝の剣術稽古に取り組んでいる。


「ここんところ毎日のようにいっていて、お前もうんざりしているかもしれないが……それでもあえていうぞ……身の安全を第一に、決して無理は禁物……いいな?」

「うん、もちろんだよ!」


 僕だって、ケガなんかしたくないしさ。

 でもま、頭に血が上ると、どうなるか分かんないってこともあるだろうから、気を付けなくちゃならないよね。

 そんなこんなで稽古を終え、朝食。

 また、朝食の際にも、ササラさんたち女性陣に気を付けるよういわれた。

 ……よっぽど心配されちゃってるね……でもまあ、それだけモンスターと戦うということは危険なことでもあるってことだから、より一層気を引き締めねば。

 そうして朝食も終え、ついに街周辺に広がる森へ向かう。


「さっき話したことと逆に聞こえるかもしれんが、気を張り詰めすぎて体が硬くならないようにな……とまあ、偉そうにいっているが、俺はそこまで戦闘が得意ってわけでもないから、自分自身に言い聞かせていることでもある」

「うん、細心の注意を払いつつ、かといってそれで気疲れを起こすまでにはいかない……要はバランスだね!」

「おう! よっしゃ、森も深まってきたし……ここからは一段と気合いを入れていくぞ」

「うん!」


 こうして森の浅い部分を過ぎ、いよいよ本格的にモンスター狩りが始まる。

 といっても、そんなすぐモンスターが出てくるってわけでもない。

 最近モンスターが増えてきているといっても、さすがに森の深い部分に足を踏み入れようとした瞬間すぐ襲ってくるってほどまでではないからね。

 そんなわけで、森の中を歩きながらモンスターを探さなければならない。

 この際、モンスターに対する警戒は怠りなく、それでいて薬草なんかも一緒に探している……そうすることで、稼ぎを増やすことができるからね。

 そして森が深まると、そのぶん魔素の濃度も高まるようで、それによっていい薬草が育ってもいるらしいからね、採取しない手はないといった感じだ。


「……この雰囲気、もう少し先にいるみたいだね」

「ほう、もう気付いたのか……やるな……」

「たぶん、間違いないと思う……ここからは、より慎重に動こう」

「ああ、分かった」


 そうして、あちら側に気付かれないよう気を付けつつ向かい……見えてきた、ゴブリンが2体。

 そこで声に出さず、僕が右側を指さし、それを受けてヨテヅさんが左側を指さす。

 これで意思の疎通はできた……あとは狩るだけ。

 村でジギムによって鍛えさせられた隠形を駆使して接近し……斬る!


「……ギ……ャ?」

「ギッ? ……ギャァッ!」


 僕が首を刎ねたゴブリン。

 それは空を舞いながら、何が起こったのか疑問の声を漏らしていた。

 その声に気を取られ、注意が疎かになったゴブリン。

 ヨテヅさんがその瞬間を見逃さず、そいつの心臓の辺りを剣で一突き。

 それだけだった。


「……フゥ……さすがフィルの息子というべきか……なかなか鮮やかなもんだな」

「フッ、まあね……」


 なんていいながら、シブい顔を作ってみる。


「またその顔か……まあ、戦闘のあとだと、それなりに凄味も出てくるといえるかもしれないけどな……」

「フッ……っと、それはそれとして、討伐証明部位を切り取っとかないとね」

「おう、そうだな」


 というわけで、ゴブリンの左耳をカットして鞄にイン。

 まあ、亡骸も持って帰れば、いくらかのお金にはなるんだけど、需要の関係でゴブリンだとさほどの金額にもならないからね……労力と見合わないといわざるを得ない。

 よって、討伐したことを証明するため、左耳を切り取って持って帰るのみ……そして、亡骸は放置ということになる。

 そこで、なんで放置しておいていいのかというと、ほかのモンスターだとか獣が食べてキレイにしてくれるからということらしい。

 また、聞いた話によると、大体の奴は顎が発達していることもあってか、骨とかまでバリバリいって、本当に跡形もなくキレイさっぱり食べてしまうらしい。

 ……それはつまり、人間も食べられたら、そうなるってことでもある。

 ただ、彼らにとって装備品とかは美味しくないらしいから、その場に残されるみたいではあるけどね。


「……それじゃあ、次に行こっか?」

「よし」


 さぁて、探すぞぉ~!

 待ってろよ、モンスター共ぉ~!!

 とまあ、そんな感じで森を歩き回りながら、発見するたびモンスターを狩っていく。

 ただ、ゴブリンばっかなのが残念なところだね……

 ホーンラビットよ、カモ~ン!!

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