第42話 なかなかいい太刀筋じゃないか
僕とヨテヅさんが、めでたくEランクに昇格が決まった。
冒険者としても、Eランクぐらいから多少は認められた存在になる……といえるんじゃないかな?
なんたって、Eランクのままで一生涯を終える冒険者も結構いるみたいだしさ。
そして、この中から戦闘能力を認められてDランクへと駆け上がる……Cランク以上は魔力必須といっても過言ではないから、平民としては実質Dランクが最高ランクだね。
……そんな平民でCランクに上がることができた父さんは、やっぱ凄いってことなのさ! えっへん!! ……などと、自慢げにしてみる。
まあ、戦闘に特化しない冒険者の場合、街の中でできる仕事だと、そこまで危険もないし、Eランクより上がる必要もない……っていうのもあるかもしれないけどね。
それに、そっち方面だって能力を認められるなどして、そのうち店や工房などに採用が決まっていったりしていくからね、事務系高ランク冒険者みたいなのはほとんど存在しないんじゃない?
ちなみに、ササラさんは既に、服屋の店員として正式に採用されていたりする。
まあね、ササラさんは美人さんだし、服屋の店員といったオシャレな仕事はよく似合っていると思うからね。
フフッ……服屋の店主も、見る目があったってことだろうね!
そんな少し遠い存在になってしまったかもしれないササラさんに対し、ヨテヅさんもEランクに昇格したことで、これから気後れせずに接していくことができるんじゃないかな?
まあ、服屋に採用が決まったあとからこれまで、ササラさんの態度に変化なんかはなかったけどね!
それと、ササラさんの勤める服屋は婦人服専門店で、おそらくあまり男性との接点はないであろうから、比較的安心できるんじゃないかな?
ただ、そう思って油断していたら……ってこともあるだろうから、頑張んなきゃいけないよね!
「……ヨテヅさん、Eランクに昇格できたことだし、これからもう少しササラさんにアプローチしていくことができるんじゃない?」
「まあ、そうかもな……」
「おっ? そろそろ本格的に動く気になった!?」
「いや、別にそんな急にってつもりはないけどな……自然に、流れのままに……ってわけさ」
「えぇ~っ! そんな悠長にしてると、ほかの男の人にササラさんを取られちゃうよぉ!?」
「フン……そいつが、本当に彼女を幸せにできる男なら……喜んで身を引いても構わんけどな……」
「そんなカッコ付けちゃって……きっと後悔するよ?」
「……うっせ」
ほ~んと、ヨテヅさんってば、へたれマンなんだからなぁ~!!
「それより……これからはモンスターの討伐など、戦闘関係の依頼を本格的に受けていくつもりなんだろ?」
「うん、もちろんだよ。それに、戦闘の講習も受けることにしたし!」
「そうか……まあ、俺も受けるし、一緒に行けるところまで行ってやるよ」
「うん、よろしくね!」
そんなこんなで、Eランク昇格の喜びを味わいながら、今日という1日が過ぎていく。
………………
…………
……
Eランクとなって数日間は普通に薬草採取などをしてきたが、今日は戦闘の講習を受ける日! ついにって感じだ!!
まあ、戦闘の講習を受けるからとはいえ、もちろん早朝の剣術稽古は欠かさない。
1日1日の努力が、戦闘能力向上の礎となるのだからね!
そうして気合いを入れつつ剣術稽古をこなし、朝食をいただく。
そして食事を終えれば、お待ちかねの……!!
「ノクト……朝からソワソワしっぱなしだな?」
「そりゃあね! ついにって感じだもん!!」
「まったく、分かりやすい奴め」
「あははっ!」
そんなことを話しながら、ヨテヅさんとギルドへ向かう。
「おはよう、今日は戦闘の講習ね?」
「はいっ! よろしくお願いします!!」
「うん、元気があってよろしい! それで、この紙にも書いてあるけど今回も、この前ノクト君が参加した薬草採取の講習と同じ部屋に集合となっているから……場所は大丈夫だよね?」
「はい、もちろんです!」
「よし、それじゃあ頑張ってね! ……そして、くれぐれも気を付けるのよ?」
「はいっ! それでは、失礼します!!」
こうして、受付のお姉さんに激励を受けつつ、講習会場へ向かう。
そして、会場内を見渡してみると……薬草採取のときに比べて一段と武闘派な雰囲気を放つ冒険者が多くなっている。
フフッ……彼らが僕のライバルであり、また、同じ道を志す者たちというわけだね。
……よし、さらにやる気が出てきたよ!
そんなことを思いつつ、講習がスタート。
今回の講師は、見た感じもガッチリで猛者って風貌だった……うん、頼もしいね!
そして今回も、前半は座学って感じ。
この街周辺の森に生息が確認されているモンスターの種類だとか、効果的な戦い方の説明などをしてくれる。
また、後半から実戦訓練をするので、その準備として剣の扱い方の説明なんかもしてくれる。
ちなみに、今回は剣による戦闘をメインとした講習なので、剣以外の武器を教わりたい場合は、別の日の講習を受けることになる。
とはいえ、槍などの武器についてもさわり程度は話してくれているけどね。
とかなんとかいっているうちに、実戦訓練へと移行。
というわけで、訓練場で講師を相手に模擬戦をしながら、直接指導を受ける。
「……ほう、ノクトといったか……なかなかいい太刀筋じゃないか」
「はい、ありがとうございます!」
やった! 褒められちゃった!!
でも、そこで有頂天にならず、しっかり訓練に集中しよう。
「……うむ、その調子で才能にあぐらをかくことなく、真摯に剣と向き合っていくことだ」
「はい! 肝に銘じておきます!!」
父さんから受け継いだ剣にも認めてもらわないといけないからね、さらなる努力は当然のことさ!
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