第41話 心配
ギルドに戻ってきたので、薬草採取の依頼達成とゴブリン討伐の報告をする。
まあ、薬草採取の依頼達成といっても、難易度自体は高くない。
というのが、薬草の種類はそろえなければならないけど、薬草5本で1束という単位となり、その1束を納入できた時点で依頼達成扱いとなるからである。
そのため、よほどのヘタクソでもない限り、5本ぐらいならさほど苦労なく見つけられると思うんだ。
それに、薬草採取は常設の依頼ということもあって、受付で事前に依頼の受注手続きをする必要もない。
そんな感じで、採取できたら持って行く、そしてあとは量をどれだけ採取してこれるかが腕の見せどころといったところだろう。
というわけで、鞄にそこそこ詰まった薬草をギルドに納入。
まあ、僕もヨテヅさんも薬草採取については、それなりにホツエン村で経験しているし、講習も受けたからね……うん、あの講師の方は本当に教えるのが上手だった、感謝である。
「うんうん、今日もたくさんだねぇ~凄いよっ!」
「あははっ、ありがとうございます」
この笑顔とねぎらいの言葉のため頑張る男たち、それこそが冒険者の本質……ということなのだろうね。
なんて、心の中で訳知り顔を作る。
「……あれっ? ノクト君……どっかケガでもしたの?」
「えっ? してませんけど……どうしてですか?」
「いや、ちょっとばかり痛みを堪えていたような顔に見えたから……それに、今日もモンスターと戦ったみたいだしさ……」
心の中だけのつもりだったけど、顔に出ていたらしい。
ただ、僕の思ってる感じと違うんだよなぁ……もっと、こう、シブい感じを出したいのに……
「でもま、ノクト君にケガがないみたいだから、お姉さん安心したわ」
「心配していただき、ありがとうございます。でも、このとおり大丈夫です」
そうして腕を曲げ、力こぶを作るジェスチャーをする。
「ふふっ、そうみたいね……ただし、いつもいっていることだけど、無理しちゃだめなんだからね? 何かあったら、すぐ相談すること、いいわね?」
「はい、そのときはよろしくお願いします」
「うん、よろしい……それにしても、やっぱりモンスターが増えているみたいねぇ……ノクト君だけじゃなくて、ほかの冒険者たちからも報告があったわ……」
「やはり、そうですか……」
ちなみにだけど、今回討伐したゴブリンも、きちんと成果として報酬をもらえる。
まあ、森の浅いところとはいえ、モンスターと遭遇する可能性もゼロじゃないからね。
とはいえ、Fランクは基本的にモンスターとの戦闘を想定しているランクではないため、モンスターをガンガン狩ってもギルドから高評価を得られない。
たまたま出くわして、避けられず戦闘になってしまった……といったイメージだろう。
ただ、それでせっかくモンスターを倒してもなんにもならない……だと悲し過ぎるので、討伐報酬が出るって感じ。
でもまあ、ギルドとしては無謀に挑戦してもらいたいわけでもないので、報酬は出すけどあんまり評価しないって扱いに落ち着いているみたいだ。
というわけで、そういうことも含めて、僕はお姉さんからムチャしないよう心配されているって感じなんだろうね。
「……そして、今回の依頼達成をもって、ノクト君はEランクに昇格することが決定しました」
「おぉっ! 本当ですか!?」
つ、ついに……という感じである。
Eランクからは、モンスターの討伐といった戦闘関係の依頼も本格的に出てくるからね……これから、そういう機会も増えていくことだろう。
「ええ、おめでとう……といいたいところなんだけど、最近モンスターの動きが活発になってきているからねぇ……私としては、心配する気持ちのほうが強くなっちゃうなぁ……」
まあ、お姉さんの心配も分かる。
というか、村で何事もなく生活していた頃だったら、そこまでモンスターとの戦闘にも積極的な気持ちになっていなかっただろうしさ……
でも、今はもう、そうじゃない……僕にとって、モンスターとの戦いは身近なものとなってしまっているからね。
「安心してください……とまではいえませんけど、僕もじゅうぶん気を付けて……いえ、今より一層の注意力でもって日々の活動に当たりたいと思います」
「……そうね、それが冒険者だものね……でも、絶対に無理だけはしないでね?」
「はい、もちろんです!」
……めっちゃ心配されてるね。
まあ、それも僕がまだ子供だからっていうのもあるかもしれない。
とはいえ、僕以外にも未成年でEランクとして立派に活躍している先輩たちが大勢いるわけだからね。
そう考えると、僕だけ特別というわけじゃない。
……うん、自信と勇気を持ってEランクとして活動していこうじゃないか!
「……それでね、これも強制ではないけど、討伐とか戦闘関係の依頼を受ける前に、戦闘の講習を受けておいたほうがいいと思うわ」
「戦闘の講習ですか……なるほど」
まあ、薬草採取の講習も受けたからね、これも受けておいたほうがよかろう。
ちなみに、Fランクには戦闘の講習がなかったのかというと、戦闘をメインとしたものはなかった。
その代わり、薬草採取の講習の中にそういった内容も含まれていた……防御や撤退といった護身を中心としたものだったけどね。
とはいえ、話の軸が護身だっただけで、剣の扱いとか日々の鍛錬方法なんかの説明もなかったわけではない。
どちらにせよ、僕は父さんから稽古をつけてもらっていたから、それについてアレコレいう必要もないけどね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます