第24話 繋がる命綱
「次、いきます!」
壁から雪崩れ込んでくるが如く、始めの一人を境にたくさんの敵が私たちの目の前に現れてきます。
「ハッ!楽しくなるわ!」
紅羽んは威勢のあることを叫んでいますが、物量が思っているよりも多かったらしく、一瞬だけ私とテンポが遅れました。
「1!2!」
来た敵を一人二人と一撃で戦闘不能にしていきますが、数を数えたところで舞い込んでくる敵の数がそんな口で数えられるほど少ないわけもなく、一人倒せば三人多くなるという風な状況で泡吹いて倒れそうですよ。
「三人!まだくるのね!」
この数秒で私だけで八人も戦闘不能にしたのにもう新しく人員が投下されてさっきよりも多くなっている状況です。これまで倒した人たちは全員私たちを倒せるなら犠牲になってまでも道を開こうとしていたのでしょう。というかここの人口密度すごいことになってません?
「
風でまとめてノックバックをして一回この場をリセットしようと試みますが、かなり踏ん張るので蹴りを入れて踏みとどまっている人たちから距離を取らせます。そして、蹴った弾みを利用して一人に勢い沈まぬ一太刀浴びせていきます。
「やるわね!けど、向こうもやられたい放題ってわけでもなさそうね」
紅羽さんがそう言い終わると同時に敵の人の海の中から、いかにも殺傷力のありそうなエネルギー弾が飛んできました。しかし、紅羽さんはこれを見越していたのか、不敵な笑みを浮かべて剣を構え直します。
「
的確な連撃と正確な太刀筋でエネルギー弾と共に前列にいた何人かを巻き込んで猛烈な速度の攻撃を叩き込んでいきました。
「すごい…です……」
「手を止めるな!」
その鮮烈な光景に見惚れてしまって一瞬ぽかんとしてしまいましたが、紅羽さんの一声でまたこの戦場へと意識を向けます。
スライディングからの回転下段で一人、その勢いを殺さずに曲げていた脚を使って飛び跳ねて一撃で二人、飛んできた水の刃を寸前で交わして近くの敵を紅羽さんのところへと蹴り送って三人。キリのないどちらかが力尽きるまで繰り返される地獄のような空間です。
先ほど侵入した経路で帰ろうにも入ってきた場所が崖のような場所からのエントリーなので崖を登ろうとしたところで能力者の遠距離攻撃によってこれ以上にめんどくさいと思います。まあ、結局のところはどちらにせよ同じ過程をすることになるって話です。
「キリがないので強行突破します。撤退の準備を」
一撃で貫ける大技なんてものは存在しませんし、地道にこの敵群を捌いてられる体力なんてもってのほかです。だからこそ今の最善はこの状況をできるだけ早めに切り抜けることであり、弱音がつけいる隙なんてありません。
「ぶち抜けばいいんでしょ?」
「そうです!」
最初にいた地点よりかはだいぶ進みましたし、もうここまできたらあとはできるだけ早くここを脱するだけなんです。だからこそ一番攻撃力のある紅羽さんに頼るしかありません。
「
連撃を主とする紅羽さんには珍しい一撃を主眼に置いた技、その一振りで前にいた敵は軒並み切り伏せられており、スピードを極限まで上げた目に映らぬほどの一閃でした。
「今!」
「ッ!」
紅羽さんの合図で地面から飛び上がり、紅羽さんの技が出終わった隙が生じるこの刹那をカバーする形で数人を薙ぎ倒します。
「合図でジャンプしてくださいよ!」
「ええ?」
入り口近くにまでやっときたんです。これならあとは近くにいる人たちを一気に捲り倒せば撤退ルートが確立します。
衝撃の威力を上げるために右手にリソースを集中させて……、一気に地面に発して爆発するイメージで!
「
「うわ!」
私が発した衝撃波は地面を伝って私を中心として小規模な爆発のように取り囲っていた敵性群を吹き飛ばしていきます。紅羽さんは私の合図とともに宙へと舞っていたために被害はないっぽいですね。
「一気に切り抜けます」
「いくわよ!」
お互い同時に駆け出し、目の前にいる残存と思われる人たちを蹴散らしていきます。一振り一振りが段々と重くなってきているのを感じていました。一体あの刹那に何人を倒したかわからないほどに剣を振り下ろしました。
「これで……!」
一瞬の期待と希望が外の光と共に目の前から入り込んできます。しかし、それは一瞬の油断を意味し、こう言った場合は下手に気を抜かないことが重要事項です。それを忘れてしまうほどにこの連戦に疲れを負っていたといえます。
「まだ……、こんなに!」
「ッ!」
私は声が喉から発せられない程にこの一瞬で絶望しました。ここで終われない、まだ私が背負う最優先事項を完了していない。なのに!ここで私は倒れてしまうのか。と一瞬のうちに頭が思考を重ねて身体が強張ります。
しかし、まだ終わりじゃないと叫ぶ希望が私を動かします。
「向日葵!脚を止めない!」
私と紅羽さんを敵から守るように間に見覚えのある人たちが割って入ります。
「無事か?嬢ちゃんたち」
「さあ来い悪党ども!」
「突っ走らないでよカリム」
私たちの後ろに立っているのは今まで私が剣聖戦で戦ってきた剣士の方たちでした。
「撤退中です。みなさん援護よろしくお願いします!」
状況を簡単に説明したのちに全速力で建物から脱出します。途中銃弾や火球などのエネルギー弾が飛んできましたが、対遠距離攻撃に対してめっぽう強く出れるベルナールさんと大盾を担いだカリムさんが全てを薙ぎ払ってくれるため私たちにそれらが飛んでくることはありませんでした。
撤退後、ある程度建物から距離を離し、追手の影すら確認できなくなったくらいで私たち一行は腰を下ろします。
「死ぬかと思いましたぁ〜〜!」
「ほんとよ」
先ほどまでの先頭によって張っていた緊張が一瞬で解けて身体に力が一瞬だけ全部抜けるような感覚に襲われます。
「皆さん、助けて下さりありがとうございます」
「ええ、お礼を言わせてもらうわ。ありがとう」
実際本当に生死を彷徨うような状況下での助け舟でしたから、本当に命の恩人と言わざるを得ないほどにあそこの援護で救われました。
「私たちもたまたま通りかかったから別にそこまで気にしなくていいよ」
「騒がしいと思って見に行ったら変な壁の先で嬢ちゃんたちが戦ってたからな」
そのことです。吹雪さんたちがどこまで知っているのかを聞いておかなければ。
「あのそのことで聞きたいことがあります」
「なあにい?」
また改まった私の姿を見てどこか吹雪さんも落ち着かないと言ったふうにおどけて見せます。
「彼らのことをどこまで知りましたか?」
異常事態の元凶である’’
「さあね、いきなり現れて大会を破壊したと思ったら街にまで被害が出てるもの私達にだってそこまで知ってることは少ないわ」
メルカさんがやれやれというような感じで壁にもたれながらいいます。
「メルカちゃんの言う通り、今の私たちにはそこまで教えられることは少ないね。一応私たちはアイツらのことを『
クォーターですか、まあ下手に長い仮称名だと咄嗟に出てきませんからね。これくらいでちょうどいいと思いますよ。
「私たちが知っている情報をお伝えします」
ここからは拠点となる『
「そしてここが私たちが拠点とする場所です」
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