第22話 私は進む
さっさと本命のオラクルクレストまで来たのはいいんですけど。
「まさか接敵することすらないとは思いませんよ」
「そうね、一体どこにいるのやらだわ」
そうなんです、セーフポイントからここまではざっと5KM程度なので少し距離があるのですが、敵との接敵を避けて行動していたとしてもどこかで接敵していたと思っていました。しかし、結果はここまで誰とも接敵しませんでした。
「流石に怖いですね。一体どういうことなんでしょうかね」
「さあ?あるとしたら透明人間が後ろからついてきてて、頃合いを見計らって襲いかかってくる……とか……」
突如紅羽さんのこの発言によって私は緊張状態に入ります。
なんで気付かなかったんでしょう?有り得る状況下のなかでなぜないと思って行動できていたのでしょう?
「状況開始!」
即時に抜刀し、紅羽さんの後ろへと刃を突き立てます。すると空間がゆらめき、人の形へと変わっていくのでした。わかっていたというよりも、ここの空間が怪しいと踏んだための攻撃です。
「これってアタシが悪いの?」
「どっちもどっちです!」
フラグをたてた紅羽さんも、この状況下で予測を完全にたてれていなかった私にも非があるのです。思えば食料確保の偵察時でもその予兆はありました。戦闘音は聞こえるのに明かりすらなかったことを考えると何ものかの能力の隠蔽によってこちらからは観測できないようになっていたと思われます。なので今回の透明人間はそれとほとんど同じようなものと言えるのでしょう。
「ヒィ!」
攻撃された透明人間は悲鳴を上げて能力を解除しましたが、またすぐに能力を使って街の景色と同化します。
「厄介ですね。これで仲間にでも連絡をすでに取られていたら私たちはかなりやばいですよ」
「向日葵!今それを言っちゃダメでしょ!」
まずいですね。これを言ってしまったら………。
「剣士だぞ!」「かかれ!」
「ほらきた」
フラグをたてたそのすぐにもう敵の増援がすぐそこまできていました。もうここまできたら下手なこと言えませんよ。
「数は4、透明含めてアタシが3、向日葵が2ね」
「了承しました、状況が楽にいけたらですけどねッ!」
「ぐあっ!」
「くそ!」
衝撃でスピードがある程度でている状態での斬りかかりによって確実に一人戦闘不能にします。続いて倒れた仲間の仇と言わんばかりに能力を使用しようとする一人に向かって蹴りを入れてダメージを入れます。
「ナイスパス!」
蹴り飛ばした方向にちょうど紅羽さんがいてくれたおかげで、紅羽さんが仰け反った敵をしっかり仕留めていきます。
「次です」
蹴りをした勢いでサンフレアを身体ごとを回転させて斬りかかります。
「うお!」
うまく敵はガードをして私の一撃を防いできましたが、まだ私は攻勢を緩めることはありません。またすぐに懐へと肩を入れ込んだタックルを敵に入れて、体勢の崩れた敵にサンフレアの持ち手を半回転させて殴るように逆手で斬り込んで倒します。
「まだ!」
最後の一人をと顔を次の標的へと向けようとした頃には紅羽さんが透明人間と同時に片付けていました。
「もう終わりよ」
誇ったような顔で私にそう告げます。
「ええ、そのようですね」
とはいってもこのくらいで敵の戦力を削ったところで何も変わらないですね。せめて大本を叩ければなんとかなりそうなんですが、私には今は関係ないです。さっさと薫さんのいそうなオラクルクレストへと侵入して確保できれば私の役目は終了です。
「先を急ぎましょう」
もうクレスト目前というところまで来たんです。ここで止まっていられるものですか!
「ええ」
また少し歩いたところでやっと目的地である建物に着いたんですけど、想定外であることが何個かあります。
「人……、いないですね」
「ここまで来ていない?そんなはずはないと思いたいけど」
紅羽さんと同意ですね。ここまで来ていないとなるとまた別の異能力による行使を疑っていかないとまたさっきのようになっている可能性だってあるかもしれないです。
「見つかる覚悟で魔法を射出します。展開してください」
「わかったわ」
私のこの奇妙な現状を理解するための行動ですので紅羽さんも賛成して少し離れたところへと展開して行きます。
「最小の出力で凝縮、なるべく小さくして……、
私が出した極小の威力を宿した風の弾は螺旋を描いて建物の方へと飛んでいきます。その時、突如風の弾は何かに当たるように空間が捩れ、まるで建物の上から布を被せたような形で空間がひらひらと揺れ動きました。
「まさかこんなこともできるなんて思いませんよ……」
居場所がバレるのを防ぐために発射した地点から少し移動してその摩訶不思議な状況を観察してしまいます。
「思ったよりも内部は人が多いですね」
仮称するとするならば光学カーテンと言いましょう。この光学カーテンは外からは完全に至って普通で、恐ろしいほど何もない建物をうつしていますが、内部からは多分バレてますね。射出した風の弾は最小限の出力で放ったので、万が一のことがなければバレてないと思うのですけれど、その万が一がこの状況であり得るのが意味がわかりません。
「地下から行くわよ」
「どこにエントリーポイントがあるんでしょう?」
ほとんどどこからも敵から侵入口を見られている状態なので、どこから近づいてどこから中に入るかなんて今の私には考えられないことです。
「着いてきなさい」
「了承しました」
言われるがまま紅羽さんの後ろを着いていくと最初に見た謎の爆発跡の付近まできていました。
「ここ、謎の場所じゃないですか」
「ここから地下に行くわ」
んな無茶なと思ってしまうほどの高さと斜面に、落ちたら割とタダでは済まないような高さしてます。それでも道はここしかないと思ってしまえるほそ短くいつ途切れるかわからない綱渡りです。今更こんなことで怖気付いていられませんよ。
「行きましょう」
そうして急な斜面を滑るように滑走していき、たまに剣を地面に突き立てながら器用に降りていきました。
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