第16話 私の望まないもの
突如振って落とされた状況下で並風さんと共に共闘を開始しました。
「合わせなさい!」
「了承しました!」
両サイドからの挟み撃ちによるコンビネーションアタックを仕掛けます。先手を担当するは並風さんによる激しい連撃による超近接戦です。一回一回の攻撃が鋭く噛み付くが如く鮮烈で美しい攻撃は謎の人物に全て防がれていました。
「な!にぃ!」
並風さんのバックステップによる合図で私は背後からの確実な手で仕留めにいきました。
「どこに!」
振った剣に当たった感触はなくただ虚空を掻いただけで、一瞬何が起こったのか理解するのに私はそこまで時間はかかりませんでした。
「瞬間移動?」
そう、謎の人物はすでに私たちと一瞬で50Mちょっとくらいの距離にいたのです。
「オマエはなんなんだ!」
戦闘モードに入って性格が荒くなっている並風さんが声を荒げて問いただします。
「ええ?それ今必要?ワタシそんなことどうでもいいと思うな」
謎の人物は黒い装束をはためかせ、不思議な剣をひらひらとさせて告げます。
「貴女は…なんなんですか?」
サンフレアを謎の人物に突きつけ私の仇なす者に剣を突きつけます。
「そうねぇ?一応名乗りもなしに殺し合うなんて無礼よねぇ。なら、ワタシの名前はビアンカ・マトグレス。【
正直何を言っているのかは分かりませんし、嘘っぽいですけれど、あれは本当なんだろうと思います。名乗った時の声使いは全然違いましたから、
「
当然の疑問ですけれど、もうそれ以上のことなんてわからないし教えてくれることすらしてくれなさそうですね。
以前として状況の理解が追いつきませんが、どうにか頭ではなく身体で感じて状況を理解させ、だんだんと身体と頭が追いついてきている感じがしています。
「とりあえず、私は助けなければいけない人が最低でも二人はいるんで、どうにかここを収めたいですね」
瞬間的に移動する相手に対して無策に行くのは得策ではないのですが、そもそもそういった相手なんてほとんどいなかったのでどうすればいいのかなんて正直分かりません。ですが、策を練るためには相手のことをまず知らなければ作も考えられません。ので、
「はじめから飛ばしてきますよ」
踏み込みは深く、身体が浮き上がるくらいまで一歩に力を入れて踏み出します。極限まで間合いを詰めるための動きを徹底し、相手の懐に詰め寄ります。
「アハ、速いわね、アナタ」
下手に前に出るなんてとてもじゃないなんて顔をしながらも、しっかりと私の攻撃に対して組織の名前であるカットラスで私の攻撃をずらしていきます。
「アナタもなかなかですね」
確かに私の剣は牽制を兼ねた攻撃だったのですが、こうもあっさりと返されてしまわれると少し腹が立ちますね。まあ、多分私よりも戦闘経験が長そうですね。分かりますとも、反応速度に加えて私の攻撃をしっかりと最低限の動きで防いでいました。この人、相当場数を踏んでいます。
そして剣を交えて分かります。この剣筋は人の命を軽んじるような剣の使い方です。
「ーー!」
並風さんがひっそりと息を潜め死角に入り込んだ見事な裏どりで相手に切り込んでいきます。しかし、初段から並風さんが間合いをとるまでの全ての攻撃に反応し、瞬間移動を駆使した戦術で見事にノーダメージでした。
「殺気がダダ漏れよ?若いのね」
「なんですってぇ?」
相手も瞬間移動で私たちとの間合いをとり、私たちが作り上げていた私たちにとって有利な位置を悠々と打ちこわしていきます。
「殺気というのはね…」
空気がピリつき始め、私の中で一つの悪い未来が見えました。
(これは多分並風さんがまずいです!)
咄嗟に迎撃態勢を取り、相手に向かって距離を詰めようとします。しかし、瞬間的に場所を選べるような相手に対してこれはいい判断ではありませんでした。
「こう使うのよ!!」
私が向かっていたところにはもう姿はなく、相手は瞬間移動で並風さんの前に移動し、殺意を織り交ぜた強大なプレッシャーを放ちました。
「へ…?あ…がッ…」
ただでさえ剣士というものは殺気などのものに対してかなり敏感に反応しますが、所詮あの人の言うところのお遊びなんでしょう。本気で死ぬ死なないなんて受けた人間は思いません。ただ殺意があったと思うだけです。しかし、並風さんはまだ実戦ではひよこ同然です。なので、今並風さんはヘビに睨まれたカエルのように恐怖で身体が思うように動かせなくなります。
「まだリソースは足りますよね…。
まるで赤子を撫でるかのように並風さんの頬に触れているところへと突っ込んでいきます。
「どいて…ください!」
魔法を手のひらに纏わせて相手を並風さんから引き剥がすように放ちます。しかし、寸前で視界からはもう消えており、後ろから声が聞こえました。
「残念ね。こっちよ」
気づいた時には剣を振りかぶっており、どうにか私は防ごうと足掻いてギリギリ防げましたが、防いだ姿勢が咄嗟に出たのもあり、並風さんにぶつかり、一緒に転がっていきます。
「ごめんなさい!大丈夫ですか?!」
「え…?いえ…、あれ…?」
並風さんは以前として放心状態であり、これでは戦闘継続が困難な状況です。それに、いつ付けられたかわからない痛めつけられたような生傷が四肢にいくつも見られます。
「く…、
できるだけ広範囲にわたって地面に幾つかの魔法でつくった風の弾を放ち、できるだけ遠い場所まで
面白そうになりそうだったのに逃げられてしまった。深追いはできたと思うのだけれど、持ち場を離れるななんてメインからのお達しで下手に動けないもの。
「次こそは逃さないわ」
体の内からくるものを感じ笑みが溢れる。
「ジガー、またコードネームで名乗らなかったのね」
蒼く風に靡かせた髪を抑ええた人物が影から出てくる。
「あら、ミズン。そんな些細なことはどうでもいいでしょう?」
ワタシがそう答えると納得のできないというようなため息を吐きながら手を振り返す。
「別にもういいわ。そんなことよりメインが呼んでるよ。ジガー」
もう今日は終わりみたいね。つまらないわ。
「そう、ここは任せるわよミズン」
新しい扉が、新しい時代の光がワタシに貫いて見せる。ワタシは楽しい未来があればそれでいい。
だからこそ、ワタシは歩みを進める。誰にも邪魔はさせない。
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