第8話 盾は歪みなく
控え室から続く暗い通路を光が刺す方向へと歩いていきます。
「眩しい…」
暗い通路を抜けると眩く煌めく舞台へと私が身を投じているのだと感じました。
「いよいよ始まりますね、予選Cブロック。私はこの剣を持ってして、相手を蹴散らします」
ソードケースから剣を抜刀し、私が試合をする場所へと歩いていきます。
「この緊張感…。私は…」
正直にいうと目眩を起こしそうなくらいには緊張しています。普段はこういったところには出ないため余計にです。
「こういう時は」
大きく息を吸い、剣を構えながら深く息を吐く。
「よし」
気分も落ち着き、私は専用の台座に剣を刺し、試合の始まる場所に赴きます。
「対戦相手さんはっと」
試合場でくるりと半回転をして私の相手となる人物を確認します。
私の対戦相手の方はカリム・パラフィという方です。みるからに頑丈そうなんですよね。私と戦い方が近そうな気がします。パワー系…、あるいはタンク…?
「やあ!君が今回僕の対戦する人だね!」
私はこの時この人の放つ体育会系オーラによって少し圧倒されました。
おう、私結構苦手なんですよね、こういった人。しかも、いかにも体育会系って感じじゃないですか。
「ええ、そうです。よろしくお願いします」
「僕からもよろしく頼む!そして、女性だからといって僕は手加減しないよ!」
挨拶はすみましたし、とっとと始めちゃって決着つけちゃいたいところですけど、そうは問屋がなんとやらです。
「!」
そうこうしているうちに光の幕が上がり始め、手には私の剣が実体化していきます。ああ、始まってしまうんだ、とどこか嬉しい気持ちと不安になる気持ちが混在して情緒がよくわかりませんね。
「いきますよ」
そう告げながらサンフレアを構えます。
「僕もいつでもOKだ!」
相手もこちらに剣を構えてきました。身体が半分ほど隠れるくらいの盾と、そこから抜刀されるロングソード。思った通りタンク型のパワータイプ、私の剣でどれほど崩せるかによって変わってきますね。
「お願いします」
開始を合図する大きな笛の音が私たちの足を動かせと急かすように鳴り響きました。
「ッ」
間髪入れずに先手での一撃を繰り出します。が、まあ防がれましたね。しっかり盾で防御された挙句に間合いをとられてしまいました。
「重いなあ、君の攻撃。でも、まだまだこれから!」
まあ、先制攻撃にしてはしっかり入ってはいるのでいいとしましょう。
「では、もう少し速くしますね」
鋒に風を纏わせ、自身の身体の後ろへと剣を構えます。
「
圧縮した空気を撃ち出して圧倒的な速さで間合いを詰めます。
「速い!けど。そんな直線的な動きじゃ、僕に攻撃を与えることはできないよ!」
知っていますとも、だからこそすり抜けるすべを見出すんですよ。
「ほい!」
直線的な攻撃に見せかけたフェイントでカウンターを置いていた相手の剣をスライディングしながら股を抜ける。
「な!?」
フェイントに騙されて攻撃した構えを戻すには大きな隙が生じますから、この一瞬を私のものにしてみせましょう。
「
今度は足の方へと風を纏わせて身体を急旋回させます。
「もらいましたよ!」
急旋回中に柄を峰に持っていき、殴るように斬り掛かります。が、これを相手は限界まで身体を捻って盾で防御してきました。
「グッ!」
無理に防いだことが仇になりましたね。大きく体勢が崩れていきます。そこに私は圧倒的なスピードとパワーで先ほどの攻撃の勢いを利用した回し蹴りで持っている盾を蹴り飛ばします。
「お終いです」
まわりに回った身体を停止させながら相手の首元に刃を突き立てて勝利宣言です。
「ま、参りました…!」
こういった大会事での勝利は例え予選でも嬉しいものですね。
「まずは一戦…」
緊張から解放された拍子でため息とともにどこか感慨深い何かがこぼれ落ちました。
光の幕が少しずつ降りていく中で私はまた何かを掴んだ気がして、でも、それは私の中ではまだ形になっていなくて。
「もう少し、もっと戦って、勝って。それから…」
続々と一回戦の試合が終わっているようで、私も次の試合の準備のために次の場へと移動を開始しました。
「二回戦目はメルカ・クレハートさん…、一体どういう人なんでしょうか」
移動中に端末から次の相手が発表されました。当然ですけど、これから先は段々と相手になる方々は強くなっていきます。一回戦目のように楽々と勝てるような状況ではなくなっていくのは目に見えて明らかになってくと思います。もしかしたらいきなり強い方と戦うことになるかもしれません。
「まあ、戦ってみないことには分かりませんね」
そう私は呟きながら次なる戦いの場に赴きました。
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