第2話 私のなんでもない日常
校舎の鐘が鳴り渡り、授業をしていた先生が退屈な授業に終わりを告げる。HRは退屈で永く感じる授業よりもすぐに終わるためか気づいたら終わっていた。
退屈な授業の後の解放感に浸る生徒たちは一斉に仲のいい友達と群れをなして放課後に何をするかを話し合っていたりとか、部活に赴く生徒たちが青春の味を求めて教室から出ていく。
その様子を静かに私は傍観をし、忙しく流れる教室の中が治るまでの結末を見届けています。今日も一日退屈で仕方のない学校生活が終わりを告げるようにあたりがだんだんと静けさを帯びていくのです。
(正直この教室が静かになっていくこの感覚はあまり悪くないんですよね)
そう私が静けさに浸りながら考えているとその静寂を破る私を呼ぶ声が聞こえてきました。
「向日葵ー!」
クラスメイトの
「どうしたんですか伽耶?ずっとここにいますよ」
そう、私は人の流れが落ち着くまでゆったりとしていたのでHR後は一歩も動いていないのです。なぜ伽耶が一回教室から出たのにも関わらず、また戻ってきたのかは大体予想がつきます。
「そりゃ、ってありゃ?」
「どうしました?」
予想はついていましたが伽耶はどこか浮かない顔をしてあたりをキョロキョロと首を振っている。
「伽耶!走らないでよ!ただでさえ足速いんだから!」
同じくクラスメイトの
伽耶の身体能力は私と同等かそれ以上の能力があるためだけに伊織さんが息を乱しながらへたり込むのも頷けますね。ちなみに伊織さんの方はというと勉学に長けており、魔法が得意でたまに教えてもらったりもしてもらってます。
「アナタが走ると私追いつけないんだけど!しかも、やっぱり
「すまんロナ。先走っちまった」
どうやら私はもう教室を出ていると思って教室を飛び出したということでしょうね。
伽耶は息を荒くしてへたりこんでいる伊織さんを介抱しながら謝る。この二人は真面目ですから芯はしっかりとしていますね。私ですか?私もちゃんと真面目ですよ。
ちなみに伽耶と伊織さんは幼少期の頃から幼馴染らしいですよ。
「お二人とも私を探していたんですか?」
「ああ、ただもう帰ったのかと思ってね。急いで出たのはいいけどまさか人がいなくなるまで教室にいたとはなぁ」
「ほら!ちゃんと探さないんだもん!そのせっかち直しなさいよね!」
この二人のこういう会話はどこか心が和やかになるんですよね。
ガヤガヤしているのはあまり得意な方ではないんですけど、仲がいい子たちがじゃれついているのは逆に和やかになるのはなぜでしょうか。
するともう一人教室に入ってきました。
「月下さーん」
教室に入ってきたのは私の友達式野音葉さんです。クラスは違えど仲良くさせてもらっている大切な友達です。
「おや式野さん、一緒に帰りますか?」
「ええ、そうだわ、今日は彼女らとも帰りません?」
いつも途中までは帰路が一緒なので放課後はいつも共に下校しています。まぁ、私は帰宅ではなく出社みたいなものですけどね。
「アタシたちも一緒でいいの?」
伽耶がうずうずしながら聞いてきますが、もとよりそのつもりでしたので。多分ですが、私を探していた理由もそういうことでしょう。
「はい、大丈夫ですよ」
「私も大丈夫よ、人数が多い方が楽しいもの」
式野さんの意見には賛成です。極端なのはナシですけどね。
「さて、ここに留まるのもアレですし、どこか寄り道しながら帰りません?」
放課後の学校帰りといえばやはり青春の無駄遣いですよね。
「じゃあさ、駅前に行かない?この前いいお店見つけたんだ。伽耶と行っても面白くないもの」
「なんだとう」
それは聞き捨てなりませんね。しかも、駅前というと薫さんの仕事場まで近いですし、一石二鳥です。
「賛成よ」「了承しました」
この場にいる全員が二つ返事で同意する。
青春真っ只中な女子高生ならこう言った話には目がないのです。
「よし!いく先も決まったし行こうか!」
伽耶の号令で一同教室の扉の方へと向かう。私もスクールバッグとソードケースを担いで一緒に教室を出る。
学校から少し歩き、バスに乗って移動したところでようやく駅前に着く。
地味にこの学校遠いんですよね。
目的地に近づくにつれてなんだかみたことのある景色に向かっている気がします。
「私こここの前きましたね」
思わず口に出てしまいました。
この前薫さんときたところじゃないですか。
「そうなのか?」
「ええ、少し気になっていたので」
場がちょっと冷えた気がします。心なしか伽耶に気を遣われてる気が!
「で、でも、まだ気になっているメニューがあるのでまたきたかったんですよ!」
必死に取り繕うように早口で弁明してしまった。いえ、私の本心ですし、何も焦らなくてもと思いますよ。
「まだ気になってるのならいいじゃないの?伽耶も変に気を遣わないの」
「そこが私のいいところでもあるんだけどなあ」
「はいはいそうねー」
本当にこの二人は仲がいいですね。少し羨ましいぐらい。
「二人ともやっぱり仲がいいわね」
式野さんも同じことを思っていました。
まあ、お店の前での談笑はマナーが悪いので、
「そろそろ入りましょうか」
「そうね」「ええ」「行こう行こう!」
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