9.TOKYO.01

蜘蛛脚の化物との闘いから2日ほどたった、特筆して話すようなことはなく、いつも通り裏道を多様して戦闘を避けながら目的地へと向かう。蜘蛛脚の化け物と戦った戸沢橋からそこそこの距離を越えた先に、待ち望んだ標識が見えた。


■東京都■


一軒家が多かった街並みは段々とビルが増えていき、ツタが絡まる階層の多いマンションが街の空を狭め始めた。荒れたアスファルトの道路からは草木が生え、所々陥没している。その中には雨水がたまり結果として小さな池ができている。かつてのコンクリートジャングルは草木に覆われることにより、原始的なジャングルに近付いている。


「こんなに変わるなんてな、、」


あまりの変わりように嫌でも時間の経過を意識させられる。物静かな街で感傷に浸っていると、前方から爆音が響く。


「何が起きた!」


ビルにわずかに残るガラスが割れ、街の奥からは黒い煙が上がっている。生存者、、はないだろうが気になるから行くことにした。煙の発生源をたどる。発生源に近づくにつれ焦げ臭い匂いがひどくなる。


「これは、ひどいな、、」


煙の発生源にあったのはガソリンスタンドだった。なぜ今になって爆発したかはわからないが少なくとも生存者はいないだろう。というより、この規模の爆発に耐えれる人間はもはや生物ですらな無いだろう。不意に後ろに気配を感じる。この状況で気配を感じるということが意味することはただ一つ。


死体君らにしちゃぁ早いじゃないか、随分な行列だが、なにがあった?」


ゾンビ達コイツらは基本的に五感は強くない。目は腐りはて、耳や鼻はただれ落ちているからだ。だからこそ慎重に行動すればゾンビ達コイツらの監視網を掻い潜ることができ、必要最低限の支出で生き抜くことができる。ただ、今回はそんな悠長なことは言ってられなそうだ。体を180度回転させ、後ろを見る。そこにはすでに100を越える死者の大群ゾンビの群れができていた。


「いつになっても都会の人は野次馬が好きだね、、」


バッグに固定していたショットガンを手に持つ。腰にぶら下げた予備の銃覚悟を確認する。


「さぁさぁやってきました、ここは現代の関ヶ原ぁ」


久々に大声を上げる。この状況では幾ら声を上げても変わらない。


生存者死体達お前ら、どっちが生き残るか、勝負といこうじゃねぇか!!」


リュックから斧を取り、左手に構える。火の来なさそうな方向にリュックを蹴飛ばし、ショットガンを構える。


「最後まで、あがいてやるよ」


ゾンビに一発ぶちこむ。燃え盛る火の海の中、開幕のコングが鳴らされた。

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