4.懐かしの宿

「ベッドは残っているかなー」


裏口から入ったホテルはかなり荒れていた。撤去作業中だと思われる中身だったが、腐肉ゾンビの気配はない。少し安心して中を探索できると感じ、慌てて警戒し直す。


「油断大敵だ、、何があるかはわからない」


口で話すことで今一度気を高める。銃を握るちからを強める。一度深呼吸をして、むせる。いくらなんでもほこり多すぎだろ、、。


「残っていたらいいんだが、ふわふわのベッド」


気を持ち直して、安全確認を始める銃を構えながら1階、2階と上がっていく。一つ一つの部屋を確認しながら進むが、目当てのものは見つからない。しばらくして、4階にたどり着く。一部屋目、二部屋目。三部屋目に来たときに、念願のそれは現れた。


「、、ベッドだ」


ドキドキしながら腰を掛ける。ほこりが舞ったが気にしない。体を包み込んだそれは全身から緊張を奪い、全身をだらけさせた。が、意識が完全に落ちる前に起き上がり、銃を握りしめる。


「安全確認だがまだだった。さっさと終わらせよう」


■■


「はぁー、、」


全ての部屋を確認して安全確認ができたあと、荷物を下ろし、ベッドに横たわる。シーツは確認途中に見つけた新品をかけ直した。


「極楽、かな、、」


久々の休息に体が反応している。だんだんと襲ってくる眠気に体がだらけていく。


「、、こいつでも使ってみるか」


静寂すぎる街に違和感を覚えたため、眠気に襲われながら古びた携帯ラジオを取る。電源をつけ、アンテナを引っ張る。物悲しい雑音が部屋に響く。しばらく適当にダイヤルを回す。途中、雑音の中に声が混じる。


「、、は?」


急いでダイヤルを合わせる。多少雑音が混じりながらも"声"が聞こえ始めた。


《この放送を聞いている生存者に次ぐ》


電気が止まって以来ほとんど聞くことのなかった"人"の声。耳を近づけて息を飲む。


《なんて、堅苦しく始めたが大丈夫かな、ちゃんと放送されればいいけど、、》


「あぁ、大丈夫。できてるよ」


声に出しながら涙を流す。そして、ラジオをてに持った。


《できてるかは知らんが話させてもらう。最初に言ってしまうが、、》


電波先の人は一拍置いて話す。一番聞きたくない言葉を放った。


《私は手遅れだ。だからこのメッセージを遺す》

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