3、高層ビル郡1

世界がこうなる前、何度かこの場所に来た。以前までは体がだるくなるような排気ガスにまみれ、人混みに押し潰されそうになったが、今では他と変わらない静寂さが漂っていた。ビルの大半は草木におおわれ、中には倒壊しているビルもある。所々陥没し、中に水がたまったものまである。


「さながら、"コンクリートジャングル"ってとこかな、、」


生い茂った木々の間、ビルの中から、早速うじゃうじゃと彼らゾンビは出てきた。ざっと数えるが大体30体、距離はざっと20~25m程。この距離ならライフルを使おう。慣れた手つきでライフルを構え、一度マガジンを外す。中を確認して、戻す。


「よし、、」


その直後、渇いた街に銃声が鳴り響いた。それと同時に、全方位からうめき声が聞こえる。そんなことにかまわず、もう何度か引き金を引き、道を開ける。


「、、こんなもんか」


ちょうど半分くらいに分かれたゾンビ達群れの間を全力で駆ける。重い荷物を背負っているが、そんなの気にしない。何しろ、重い荷物を背負っての移動それがもはや当たり前と化していたからだ。


「まったく、、面倒なこった」


そう言いながら目の前の廃車をかわしなが走る。交通ルールなど知らないが明らかに違反行為まみれな道路は端から見たらおもしろく見えるだろう。


「ったく、ココは名古屋じゃあねんだよっと」


回りの車より二回りは大きいトラックにしがみつき、荷台の上に乗る。さすがは都市部、追ってきたお客も中々に数が多い。


「もうちょい走れるようになってから来るんだな」


ヤジを飛ばしながら車の上を走り、道路の反対車線に出る。間にガードレールがあるお陰でこっちにこれないやつらを見て高らかに叫んだ。


「じゃあな、ストーカー野郎共!地獄で待ってろ、行く気はないがな!」


自作の火炎瓶に火を放ち、腐肉の群れに投げ入れた。すぐさま肉を焦がすいい匂いがしたが、他のやつらも同じ感想をもつだろう。すぐさまその場を離れる。ある程度離れ振り返ると、焦げた肉片に面がる未調理の腐肉ゾンビが集まっている。長年の経験と勘は正しいと改めて思った。


■■


「よいしょっと、、ついたな」


屋上から伸びる蔦を使ってビルに入る。四階まで這い上がったのち、銃を構えながら索敵する。今日の寝床にこのビル、いや、ホテルを選んだのは大した理由はなかった。一度泊まったことのあるホテルだったから、ある程度の部屋割りを覚えている。騒動直前に潰れたから安全に近い環境だから。いくつか理由は上げれるが一番の理由はシンプルだった。


「ここのベッド、柔らかかったんだよな、、」


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