2、朝の弾数確認

「ピピ、ピピ、ピピ、ピピ、ピピ、ピ」


また朝か、、。腕時計についているアラームが5時になった。正確だ。一度背伸びをし、立ち上がる。昨日は久々によく寝れた。いつもの日課を繰り返す。まず体を濡らしたタオルで拭く。(今日は入った家のをつかう。)次に、服を着る。(昨日寝る前に(少ない)水と(大量の)洗剤で漬けたあとに、干していた。)次に弾数の確認をする。いつもの携帯している三種類の銃は全てたまが違うため、朝のうちに確認していた。ショットガンの弾が58発、アサルトライフルの弾は30発入りのマガジンが4個、つまり120発、無駄撃ちしなければしばらくもつはず。


「次はその他装備はっと」


リュックサックを確認する。左には斧をかけ、右にはライフルを設置できるようにしている。リュックの下には昔から持っているピッケルとバールをかけている。中を確認する。ボトル入りの水、缶詰、そして酒。他には自作の火炎瓶や滅菌包帯、そして"薬"。その他役に立ちそうな道具がズラリとはいっている。


「よし、確認はした」


最後に口元にマスクをつける。こうなる前に政府が配った"ガスマスク"、結局意味はあまりなかったが、なんとなくつけてしまう。この"菌"の前の"ウイルス"のパンデミックの時に"マスク"で顔を隠していたからだろうか、、。


「、、、行くか、。」


すべての手はずを終え、また歩きだす。いく宛もなく、なにも考えず、ただ生きる。そんな日常を日常と呼べるのかと考えながら一歩前にふみだす。家の窓から隣の家の屋根へ飛び移る。さっと飛び移り、また歩きだす。いまだ照りつける太陽をみて、目を細める。


「映画みたく昼間は動かないでほしかったな。」


下をみる、相変わらず腐った体を引きずりながらあいつらは俺を見上げる。「冬虫夏草のような「体をのっとる菌」に蝕まれた事により、腐食もかなり遅くなっている」らしいが、学者じゃないからその辺の知識は皆無だ。しかし、「こいつらゾンビは「仲間」を増やそうとして人を襲う」。パンデミック初期に出されたこの仮説は的を射ている気がしてならない。


「そんな歩く死体ゾンビに話しかけている時点で、俺もおかしいのかな、、」


ついつい考えてしまう、自分も"あっち側"にいったらどれほど楽か、、。しかし、もう引き返せない。ここまで生きてしまったからか、下らない使命感がつきまとう。


「あ、、、まじか、、、。」


なにも考えず屋根を渡っていたが、ついに住宅街の端まで着た。ここから先はビルが立ち並び、とてもじゃないが上を渡ることができない。


「地上戦か、弾はもつかな、、」


避ければいいものをなんとなく突っ切る。理由もなにもなく、ただ歩く。でもそれでいい。なにせ、それを咎める人も、責める人も、もう何年もあっていないのだから。


「さて、行くか、、」


そう呟き、屋根から塀に、そして道路へと降りる。ショットガンをつかみ、弾を入れる。そうして市街地に入っていった。

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人類最後の逃避行 数多怜悧 @amamiyayuiti

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