第36話 ユニークな植物


 私はアルベルトさんに連れられ、小屋の後ろにある畑へとやって来た。


 そこにはとても立派な畑があった。

 土の状態は良さそうに見える。畝もちゃんとある。木々も適度に切ってあって、日当たりも良さそうだ。


 しかし、肝心の作物が見当たらない。



「あの、ここに作っている作物というのは……」

「ああ、ここだ」


 アルベルトさんは地面を指し示した。



「え? この変な形のものが……?」

「そうだ」


 屈んで地面のそれを間近で見てみる。

 私の目には、小指ぐらいの大きさをした緑色の蛇が、地面の上でとぐろを巻いているようにしか見えなかった。


 薬草とかの類ならまだ分かるんだけど、これは畑だって言っていたし……。アルベルトさんは一体何を栽培しているんだろう。



「ちなみに何の作物なんですか?」

「それは小麦だ」

「これが!? 私が以前に見た小麦とはだいぶ違うんですが……」


 幼い頃に城の図鑑で見たことがある。でもその絵では、立派な植物が描かれていたはず。



「この辺りは世界樹の根が張り巡っている場所でな。その影響で作物も変化が起こり、土壌が悪くても植物は育つんだが……こんな珍妙な姿になることは今まで無かった」


 うーん……ここまで酷いことになっていたなんて。



「これではマトモには育たぬし、収穫なんてできやしない」


 アルベルトさんはガックリと肩(枝)を落とした。


 どうにかしてあげたいけれど、私にも原因は分からないのよね。でも試しに聖女の力を使ってみようかしら。


(……ん? なんかこれ、ちょっと変かも)



 見た目はただの草なんだけど、たしかに他の草とは何か違う感じがする。


 私は疑問を抱きつつ、草を採取してみた。 

 指先に聖女の力を宿らせるも、草からはほとんど反応が返って来ない。


 今度は力を目に集中させてみる。ひげ根のような部分はあった。だけどそこから先が無い。普通の植物なら、地面と繋がる生命の線が見えるはずなのに。



「……なるほど。それでこんなに弱っていたんですね。それにしても……どうしてこんなことに……」

「それは儂にも分からん。だから困っているのだ」

「そうですか……。うーん……」


 しばらく考えたけど何も思い付かなかった。

 私一人じゃあこの問題を解決できない。



「どうだ? 試しにヴェルデの力を使って、この畑でなにか植物を生やしてみてくれないか」

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