第24話 のんびりとした朝


「おはよう、ヴェルデちゃん。よく眠れたかしら?」


 廊下を歩いていると、すぐにオーキオさんに出くわした。


 オーキオさんは今日もメイドの格好で、なぜか箒をもって掃除をしていた。やっぱりコルテ様とは違って王族らしくない。



「はい! ぐっすりです!」


 元気良く答えるとオーキオさんは安心したように微笑んだ。



「良かったわ。昨日は突然倒れちゃったから、心配していたのよ」

「ごめんなさい……」

「いいえ、謝ることじゃないのよ。確認もせずにお酒を出しちゃったこっちに非があるし……さぁ、朝ご飯を食べましょうね」


 オーキオさんはそう言うと昨日の食堂に案内してくれた。


 今日のメニューはパンケーキのような物で、ジャムやバターが添えられている。飲み物は何種類かあるみたいだけど、見たことのない名前ばかり。またお酒だったら怖いので、とりあえず牛乳のようなものを頼んでみた。



 今朝の食事もとても美味しかった。

 朝から温かい食事が食べられるなんて感動だ。なんだかホッとする味だな。


 目をジーンとさせながら味わって食べていると、オーキオさんは私を見てクスクスと笑っていた。



「ヴェルデちゃんは本当においしそうに食べるのねぇ。見ているだけで幸せな気持ちになれるわ」


 恥ずかしくて顔が熱くなる。

 オーキオさんの笑顔を見つめ返しながら、照れ隠しのように口を開く。



「だってすごくおいしいんですもの!」

「ふふ、ありがとう。おかわりもあるから沢山召し上がってね」


 オーキオさんは嬉しそうな表情を浮かべると、「あ、そうだわ」と手を打った。



「――ところでヴェルデちゃんは今日どうしたい? まだ体調が本調子じゃないなら、部屋に戻って休んでもらっても良いのだけれど」


 オーキオさんの言葉を聞いて少し考える。

 確かに二度も倒れたあとで、これ以上迷惑はかけられない。でも、せっかくだからこの国の事をもっと知っておきたい。それに……あの人のことも。



「あっ、えっと……それなら私、コルテ様が普段どんなお仕事をされているのかを見学したいです。……その、ご迷惑でなければ」

「おや? あらあら、まぁまぁ? それってもしかして」


 オーキオさんはニヤリとした表情を浮かべると私の顔を覗き込んだ。



「ヴェルデちゃん、陛下くんのことが好きになっちゃった?」

「そ、そそそそんなことないですよ!?」


 私が迷わず即答すると、オーキオさんは両手で頬を押さえた。



「ああん! もうっ、可愛いんだからー!!」


 そう言うなり私を抱き締めてきたオーキオさんは、まるで愛玩動物でも可愛がるように頭を撫で回してきた。そして私の耳元で囁く。



「ヴェルデちゃん、それでも彼が気になっているのは本当なのよね?」


 私は思わずビクッとする。オーキオさんは私の反応を見てクスクス笑った。



「大丈夫、誰にも言わないわ。私とヴェルデちゃんの秘密にしてあげる」

「べ、別にそういう訳では……」

「ふふ、照れなくて良いのよ。恋をすることで女の子は可愛くなるの。ねぇヴェルデちゃん、お姉さんに相談してみなさいな。きっと力になってあげられるわ」


 オーキオさんは私の背中をさすりながら優しく微笑んだ。


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