第25話 ハイエルフ
「……私、ずっと独りだったんです。誰も私を必要とはしてくれなかったから」
私は自分のことを話した。家族からも使用人からも疎まれていたこと。ずっと独りで、死ぬまでこのままなんだと思っていたこと。
だから本当は誰かを愛したり、愛される方法が分からないということも。
「そう……そうだったのね。大変だったわね、ヴェルデちゃん」
オーキオさんは私の頭を撫でると立ち上がった。
「でも大丈夫よ、ヴェルデちゃん。今のあなたには私たちがいるもの。それにきっと、陛下くんもいつかあなたのことを必要としてくれるはずよ」
オーキオさんは私に手を差し伸べる。
「さぁ行きましょう、ヴェルデちゃん。陛下くんがいるところまで案内するわ」
私はオーキオさんの手を握り返した。
「はい!」
オーキオさんはニコッと笑う。
「良い返事だわ。それじゃあ出発しましょうか」
オーキオさんは私と手を繋いだまま、城内をエスコートしてくれた。
「あの、ところで私たちはどこへ向かっているのですか?」
王城内の入り組んだ廊下を進み、何度か階段を下りていく。オーキオさんが居なければ私は間違いなく迷っているだろう。
「世界樹の地下にある泉よ。陛下くんはいつもそこにいるの」
「世界樹の泉……」
私はゴクリと唾を飲む。
「陛下くんは、この世界樹の生命に大きく関わっていてね」
「えっ? どういう意味でしょうか」
オーキオさんは少し考えるような仕草をして言った。
私はドキドキしながら答えを待つ。
「まぁ、陛下くんの妻となるヴェルデちゃんだし、知っておいた方が良いわよね。実を言うとね――この国のエルフは世界樹と契約を交わすことで、さらに上の存在であるハイエルフになるの。そして代々のハイエルフは強大な力を持ち、この国を統べてきたわ」
「そ、それは……まるで神様のような存在ですね」
私がポツリと言うとオーキオさんはクスッと笑った。
「ふふ、そうかもしれないわね。私たちエルフは陛下くんを特別視しているから。そうね……神というよりも、精霊に近いって言った方が正解かしら」
「精霊……」
「そう。陛下くんはその中でも水精霊との親和性が高くてね。国を巡る大半の水は、あの子が管理しているの」
「それはスケールが大きいですね……」
私の中のイメージでは、精霊は世界中のありとあらゆるものに宿って力を貸す感じだけど……水もそうなんだろうか。
オーキオさんは歩きながら話を続ける。
私たちはまだ地下へは到着しないようだ。
地下への入口は複数あるらしく、そのうちの一つを目指しているみたい。
「だけど本来は他に王となる予定だった人物がいるの。その人物は陛下くんよりも強大な力を持つ……だけど世界樹が病気になってから、その人は
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