第8話 静かな部屋の中で
感情的になることなんてないと思っていた
俺は反省文を書きながら物思いにふける。
俺は2日前、サーバントの教室で起こした事件により、3日間の寮内謹慎、20000文字の反省文の提出という処分を食らった。
処分が普通より軽いのはアレフ校長が手を回してくれたお陰だろう。本当に頭が上がらない。
あの日、寮に帰ってきたルームメイトのミハによると、俺がアイリスと話している途中、彼女の言動に腹が立ち、威圧魔法を使ったが、自分でも制御ができない過剰な魔素を孕ませたことで校内破壊を引き起こした。ということになっているらしい。
ミハ曰く、アイリスは元々周りからの評判も良いものではないらしく、トラブルになるのもこれが初めてではないらしい。
俺が校長室に呼ばれた後、アイリスも校長室に呼ばれ、結構な時間指導を受けたとのこと。
「今は昼休みくらいの時間かな」
話す相手もいないので、1人でぼそっと呟く。
すると廊下から
「忘れ物しちゃって、開けてくれない?」
ミハの声だ。
オースティンの寮では、部屋の感知結晶に魔力をちょこっと込めれば開けれるのだが、何か荷物でも持っていて手が塞がってるのか?
そのまま扉を開ける
扉を開けた瞬間勢いよく向こうから押される。
「うわっ」
驚き声が出る。
顔を上げると
アリアがこちらを見下げている。
なるほど。声真似の魔法でミハの声を真似したってわけね……
「なんでこんなとこにいるんだよ」
「そんなの、あんたとアイリスの話聞いたからに決まってるでしょ」
誰に聞いたんだか…
「だとしても君には関係ないよ。相手が誰であれ、人の事情を娯楽として周りの人たちに広めることがむかついただけさ」
「だからって、魔法を使わなきゃいけないほどなの!?」
「それに関しては本当に反省してるよ。編入前は田舎暮らしだったから、あまり人付き合いに慣れてないんだ」
「だからって!!」
「ほら、昼休みの時間もあるし、誰かにバレたら君もタダでは済まないぞ。」
アリアはその場から動かず、恐る恐ると言った感じで俺に質問をする。
「私の話、聞いたんでしょ?」
「まあ聞いたけど、別に君が何か思う必要はないんじゃないの?」
「ど、どういう…」
「だって、アイリスが話してたのは君自身の話じゃなかったよ。大事なのは君がどうなのかじゃないの」
「でも……」
アリアは言葉を途中でやめたが、口は動いていた。なんだ?
「大丈夫か?声聞こえないけど」
アリアの目がはっと開き、小さな声で
「そっか、そうだよね」
と、呟いた。
「ううん。なんでもない」
「まあ、俺のことは本当に気にしなくていいよ。あとは君がどうなりたいかだろ、なんかできることあったら協力するよ。ま、まあ謹慎が解けたらだけどね」
「そう。ありがとう」
ここに入ってきた時とは違い、明らかに元気と勢いが無くなったような感じだ。なんか変なこと言っちゃったかと不安になる。
「じゃあ私戻るわね」
「うん、頑張ってー」
アリアがドアを開け出て行った瞬間
ゾクゾクゾクッッ
明確な殺意を感じた
どこから?部屋の中にはなにもいない。と、いうよりあの殺意はアリアの背中から感じた気が――
「アリア!」
そう叫び、慌てて廊下に出る
が……
廊下にはアリアはいなく、特に何かがあったような痕跡は残っていなかった。
しかもここはオースティン、ここまで入念に貼られた結界や感知魔法をすり抜けることはほぼ不可能。しかも俺に向けられた殺意はまるで……
「悪魔…」
気のせいなんかではない。
まさか…
彼女が悪魔の次の依代なのか
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