第2話

「もうすぐ球技大会だねー」

「ほんとだよ。どっちに出る〜?」


女子の種目はバレーかドッヂボール。テニス部ではあるが、運動神経は悪い紗奈と優里。迷惑をかけたくなく、出たくないと思っていたが、結局ドッヂボールをすることにした。


当日。雲ひとつない晴天で、朝の目覚めもいつもよりかよかった。拓海先生は写真を撮る係なのか、行事がある度に写真を撮っている。


「ねぇー、写真撮ってもらいに行くー?」

「いいよ、迷惑だし。」


紗奈は考えすぎていつもこのような結果になる。


「ねぇー!拓海先生来るよ!」

「こんにちはー。」


挨拶だけしか出来なかった。いつものことだ。話かけにも行けない、今日を明日も明後日もまた、繰り返すだけ。


結局今日も話すことが出来なかった。



「球技大会は終わったけど、文化祭が待ってるからなー!」

担任の先生が行った。最初で最後の文化祭。1、2年生の頃は文化祭がコロナのせいでなくなった。今年の文化祭は3年生は店をまわるだけだ。受験生という肩書きのせいで何も出来ない。1、2年生はクラスごとに1から作ったり、店を出したりできる。今年の3年生だけ、不平等だ。高校生の1番の行事は文化祭だと思っている紗奈と優里にとって、今年の文化祭はつまらない。


用意する必要もない3年生は1、2年生が準備している時間も、授業に当てられる。

「いいな〜」

「私たちもやりたかったね〜」

「せめて帰らせてもよくない?」

「それなー。授業だって、教科によってはいらないものもある人も沢山いるんだから。」

「先生たちって何も分かってないよねー。」

「きっと校長先生だよ!もう、!!」


紗奈と優里はとくに楽しいとも言えない学校生活を必死に過ごしていた。何も考えずに毎日送っていたから、時間が経つのは早かった。


気がついたら文化祭の前日。

「明日だねー。」

「どんな感じなんだろうねー。」

「明日何もないから、拓海先生にでも話しかけに行ってみようよ!」

「無理だよ〜そんな緊張するに決まってるもん、」

「明日行くからね!じゃ、バイバイ。」

「は〜。」


優里のお節介で明日は拓海先生のところに行く話になった。紗奈は家に帰って、すぐにベッドにダイブした。明日のことをいろいろ考えすぎて、頭がいっぱいだ。

「明日、ほんとどうしよう。話しかけになんてどうすればいいんだよー。話す内容なんて何も無いし。優里が一緒に話してくれるかも分からないしなー。あー、………。好きな食べ物を聞く?いや、話し下手かよ!思い切って、彼女とか?いや、もしいたら、どうするんだよ〜!はぁ〜。」

ため息をつく紗奈。紗奈は一睡もできなかった。


文化祭当日。

「紗奈、クマすごいよ?どうしたの?!」

「ああー昨日なかなか寝れなくて。」

「ええー!せっかく拓海先生に会うのに、あ!コンシーラー今日あるよ!トイレ行って準備して行こ!」

「ごめん、やっぱり無理。」

「なんでよー。」

「昨日、いろいろ考えたんだけど、まず先生を好きになった事自体ダメじゃん!そんなんで話かけになんて行けないよ、」

「そっか〜、分かった!ねぇ、あっちのチョコバナナ食べに行こー!」


優里の優しさに涙が出てきそうだった。また、話せなかった。こんなことを考えているせいか、文化祭もあまり楽しめなかった。いつ間にか終わって、帰りの時間帯になっていた。


「紗奈ー!今日はいっぱい寝なよ?」

「ほんとごめんね。」

「いいよいいよ、私が1人で話進めてただけだから。あ。もう行かないと。じゃあね!」

「うん。バイバイ。」


紗奈は家に帰ってまた考え込んでいた。これからどうしたらいいのか、諦めるべきか、たくさん考えたが答えは出なかった。

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