第168話
「会談の申し入れ?」
俊はマーカスから突然そう報告を受けた。
「はい。隣接するキリス星系の領主からです」
「受けた方がいいんですよね?」
「ハーリー星系は辺境ですから。ほとんどの物資や人の流れはキリス星系を経由することになります。今後のことを考えれば受けるべきかと」
一部例外はあるものの物の流れのほとんどをキリス星系に頼っている。
関係を深められるなら深めておいた方がいい相手だ。
「わかりました」
「では、日程を調整しておきます」
調整の結果キリス星系への訪問は1週間後と決まった。
今回は旗艦として信濃を起用して周囲を親衛艦隊が固めることになる。
信濃を起用したい理由は戦争をしにいくわけではないが皇族としての威厳を保つためである。
これだけの艦を運用できるのだぞと見せつけるわけだ。
今回は付添人としてマーチェを連れていく。
他の女性陣にも同行するか聞いたのだがマナーが不安なので辞退するとのことだった。
ここで気を付けなければならないのは貴族の中には人族至上主義の者がいることだ。
銀河帝国には実に様々な人種がおり人権を認められている。
だが、彼らは人族以外を排斥しようとするのだ。
幸い、キリス星系の領主はそういった噂は聞かないが会う相手によっては気を付けなければならない。
旅程は問題が起きることもなく無事にキリス星系に到着した。
「こちらキリス星系。管制です。来訪目的をお知らせください」
「ハーリー星系、領主の俊・マーキュリーです。キリス星系の領主、ウェルストン・キリス殿との会談の為に来ました」
「お話は伺っております。ようこそキリス星系へ」
管制の指示に従って艦を停泊させる。
信濃の周囲を親衛艦隊が固め、さらにその周囲をキリス星系の星系軍が固める。
信濃から連絡艇に乗り換え、先導の為にやってきた艦の指示に従いステーションに乗り込んだ。
連絡艇から降りるとそこには歓迎の為に領主であるウェルストンが待っていた。
「わざわざお越しいただき申し訳ない。皇族の方を迎え入れられて歓迎の極みです」
「今回はご招待いただきありがとうございます」
「このような場所ではあれですから場所を変えましょう」
案内されたのは一流のホテルだった。
他に客の姿はない。
それを不思議に思っているとウェルストンが種明かしをしてくれる。
「今回は貸し切らせていただきました」
「わざわざ貸し切りに?なんだか申し訳ない」
「いえいえ。本来であればもっと相応しい場所を用意できればよかったのですが・・・」
ステーションは建築スペースが限られている。
領主と言えど普段は使わないスペースを確保するのは難しい。
客を迎え入れる際にはこうしてホテルを利用したりするケースが多かった。
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