第167話

冒険者であるヨットナーは念願の自分の船を手に入れ浮かれていた。

現在は輸送船の護衛任務を受けハーリー星系に近接するキリス星系に向けて移動中である。

「おいおい。浮かれるのはわかるが仕事はきっちりとしろよ?」

「先輩。でも、ここは比較的安定している宙域じゃないっすか」

「そうだけどな。お前は気を緩めすぎだ」

そこに先行していた同僚から警告が飛んでくる。

「レーダーに反応有。このパターンは宇宙海賊だ」

「おいおい。まじか・・・。処女航海に戦闘とか勘弁してくれよ」

「ちっ。とにかく輸送船の安全が第一だ。前に出るぞ」

輸送船を守るように陣形を組んで前に出る。

「相手の数は?」

「少し待ってくれ。よし。捉えた。数は8隻だ。うち民間船を改造したのが7隻。駆逐艦と思われるのが1隻」

「こっちは4隻しかいねぇんだぞ。その上、駆逐艦クラスまでいるなんて・・・」

「ぐちぐちうるせぇぞ。相手も損害は望んでねぇはずだ。粘れば勝機もある」

あっという間に宇宙海賊との交戦距離に入る。

「まずは、全弾もってけぇ!ミサイル発射!!」

ミサイルは冒険者達にとってお守りのようなものだ。

輸送依頼の依頼料では到底賄えないぐらい高価だがここで沈むよりはマシだ。

「ミサイルの着弾を確認。4隻に至近弾」

「もうちょい巻き込めるかと思ったが・・・。近接戦用意。突っ込むぞ」

「了解だ。うまく先導してくれよ」

もっとも経験のある冒険者が先頭で宇宙海賊に突っ込んでいく。

宇宙海賊から集中砲火を喰らうが回避行動を取り宇宙海賊と肉薄する。

至近距離からレーザーを喰らわせ2隻を行動不能に追い込んだ。

「相手から降伏信号だ。受諾するか?」

「そうだな・・・。懸賞金は惜しいが依頼をほっぽりだすわけにもいかねぇか」

「たく。大損だぜ」

「そういうなよ。依頼失敗で違約金を払うのも嫌だろ?」

「そうなんだがな・・・」

「とにかくここから離れるぞ。輸送船と合流する」

「了解」

ヨットナーにとって最も幸運だったのはベテランの冒険者と組んでいたことだろう。

腕が悪い冒険者だとミサイルを惜しんだり、陣形が乱れて近接戦で被害がでていたことだろう。

後は買った船の性能にも助けられた。

操縦性も良く未熟な腕でもベテランの操縦にも十分追従できたのだ。

「とにかく後は問題なく目的地に着くのを願うばかりだな」

「そうですね・・・」

これ以上の出費は勘弁願いたいところである。

彼等の願いは天に届き無事目的地に到着した。

赤字ではあるが生きている。

それだけで明日への希望があるのだから・・・。

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