第166話

マーチェの作戦はこうだ。

事実の中に嘘を混ぜる。

混ぜられた嘘でどのルートでどこに流れているのかを確認する。

そうするとことで情報の漏洩先を特定するのだ。

この役目は暇をしている俊の親衛艦隊に仕事を割り振ることにした。

星系軍では経験不足ということもあるし、親衛艦隊にはそれ専門の訓練を受けた人材も混ざっているからだ。

俊が指示を出すと親衛艦隊の面々は嬉々として作業を開始した。

それには経験を積む為に俊と明石も参加することになった。

「まず、問題になるのはどこまで本当の情報を流すかです」

「動力炉に関しては全て真実でも問題ないのです」

「と、いうと?」

「技術としては今までの物と変わらないのです。小型化させようと思ったら生産施設を根本的に改良しないと無理なのです」

「なるほど・・・。確かにその通りですね」

動力炉に関しては小型にするために明石が一から部品を造っている。

ダウンサイズする為には現在の規格では不可能だ。

製造しようと思ったら一から工場を造るか大規模な改修が必要になる。

そんな動きを見せれば取り締まりの対象になるのは間違いない。

「空母に関しては没にした案があるのです。そちらを流してみるのです」

「ちなみになんで没にしたんだい?」

「積載量を増やすためにぎりぎりまで装甲とかを削ったのです。でも、安全性を考えたら実用に耐えられないと判断したのです」

「なるほど・・・。基本的に空母は安全圏で運用するものですが戦闘に巻き込まれないわけではないですから・・・」

明石は新たにデータを1つ出してくる。

「これは?」

「シミュレーションの結果なのです。これだと危なすぎて運用できないのです」

下手をするとデブリとの衝突でさえ、耐えられない結果となっていた。

「確かにこれは・・・」

データを見れば納得するしかない。

「でも、こんな空母を運用しようとする人いますかね?」

「宇宙は広いですから・・・」

「なるほど・・・。色々な人がいると」

「仮に造ってくれたら撃退もしやすいですし採用ということで」

後の仕事は親衛艦隊の仕事だ。

俊と明石は作られた欺瞞情報を見て多いに勉強させてもらった。

自分達なら違和感を覚えることはないだろう。

これには多くの人が騙されるに違いない。

後の事は任せて俊と明石はこの場を後にした。

今回の仕掛けが出るのは最短で1ヶ月後だ。

家宝は寝て待てというが待つしかない。

明石は艦の設計をしつつ流す偽情報も作っていた。

どうやら情報戦をゲームのように楽しんでいるようである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る