第165話
万能工作艦である明石が造船した戦艦や空母はハーリー星系の星系軍に引き渡された。
受け取った星系軍の最初の仕事はデータを取ることだった。
というのも明石が悪乗りした結果、既存の艦とは違う特性を持っていたからだ。
例えば砲撃に特化した戦艦。
通常は艦全体を動かすための動力炉が載せられているだけだというのに砲の為だけに専用の動力炉が載せられている。
そしてその動力炉は既存の物よりコンパクトな設計なのだ。
試作品ということになっているが情報が公開されればこれだけで莫大な利益を生むことも可能だろう。
明石の悪乗りはこれだけに終わらない。
空母に関しても画期的な設計をすることでその積載数や効率的な運用を可能にした物を造っていた。
俊は上がってくる報告書を見て苦笑いするしかない。
「明石・・・。好きにしてもいいとはいったけど・・・」
「何かまずかったです?でもデータが集まったらもっと凄い艦が造れるのです」
明石は工作艦として生み出されたのだ。
艦を造るのは本能と言える。
そこに突っ込むのも野暮というものかもしれない。
「う~ん・・・。ほどほどにね?」
「わかったのです」
唯一の救いはマッドな科学者達と違って明石は資源を無駄遣いしないことだろう。
むしろ造船のプロからしたら驚愕的な効率の良さだ。
そして何より明石が楽しそうなのである。
それを見ているとストッパーになるべき俊としてもついつい甘やかしてしまう。
「俊様。僭越ですが明石ちゃんの好きにさせては?」
「マーチェ・・・」
「結果論ですが、戦力増強という面から見ても良いことですし・・・」
「そうなんだけどね。ただ、余計な敵を呼び寄せないかちょっと心配になってね」
「あぁ・・・。なるほど。心配もわかりますがそれは諦めるしかないかと」
実際に目敏い宇宙海賊をはじめ企業の一部は怪しい動きをしている。
あからさまな行動を取っている物はともかく全てを取り締まることは不可能だ。
企業もそうだが、宇宙海賊と言っても普通に取引しにきている船については取り締まる方法がないのだ。
なるべく情報を出さないようにしているがそれでも情報の流出は避けようもない。
それは何も俊達だけに起こっている問題ではない。
どこも欺瞞情報を流したりと裏で色々と手を打っているが完全には情報の流出を抑えることは不可能なのだ。
「俊様。逆に考えましょう。これはチャンスです」
「チャンス?」
「えぇ。銀河帝国艦隊に恩を売るチャンスです」
俊はマーチェの話に耳を傾けるのだった。
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