第163話
俊の元を辞した企業のお偉いさん方は場所を変え密談をしていた。
「あの若造が・・・。我々を舐めやがって」
「そう言いたい気持ちもわかりますが落ち着いてください」
「そうは言うがな・・・」
「腐っても領主です。それに後ろにいるマーキュリー家本家を敵に回すのは得策ではありません」
ここにいる企業の面々は本社から左遷される形でハーリー星系にやってきた。
ようやっと甘い汁を吸える程成長したというのに俊のせいでそれが難しくなっていた。
とはいえ、完全に闇ルートが絶たれたわけではない。
今は監視の目も厳しいが監視の目が緩むまで耐えればいい。
「とにかく今は耐える時です。先方にもそう伝えておきます」
だが、彼らはその取引相手が罠であることに気がついていなかった。
銀河帝国艦隊の囮部隊の1つだったのである。
不正に流された商品のルートを割り出しより大きな犯罪を取り締まる。
その為に利用されているとも知らず全ては自分達の采配のおかげだと思っていた。
俊の元に父であるカールから秘匿通信が入っていた。
「やぁ。久しぶりだね」
「父さん。何かありましたか?」
「うん。治安維持を目的に取り締まりを強化しただろ?ちょっと企業への締め付けを緩めてほしくてね」
「それは構いませんけど、説明してくれるんですよね?」
「企業の一部が不正を働いているのは周知の事実でね。犯罪捜査の囮として使っていたんだ」
「なるほど・・・。その調査の妨害をしてしまったと?」
「いや。そうでもないよ。最近の彼等は増長していたからね。いい薬になったことだろう」
不正を働いているというのに堂々としすぎているとは思ったがやりたい放題できていたことで警戒心が薄くなっていたのだろう。
「とにかく。そういうことだからうまくやってね」
「わかりました。とはいえ、領民に被害が出そうなら介入しますからね」
「うん。領主としてそこは譲ったらダメなところだからね。頑張ってね」
それだけ言うと通信は切れた。
「ふぅ・・・」
「お疲れですかな?」
「マーカスさん・・・。捜査の為とはいえ犯罪を見逃すというのはなんだかもやもやしますね」
「お若いですな。まぁ、彼等の不正は領民に被害が出るような物ではないですからな」
「そこだけが救いですね」
「この調査報告書をみれば納得できるでしょう」
そう言ってマーカスが送ってきたのは実際に商品がどこに流れどういう犯罪に使われたのか。
そして摘発されるまでの一連の流れだった。
結果を見れば納得するしかない成果が記されていた。
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