第162話
「順調に金を稼げてるのはいいんだがな・・・。独立したいって連中に泣きつかれたんだよ」
「まぁ、気持ちはわからなくもないですけど」
冒険者にとって自分の船を持つというのは一種の夢だろう。
「で、だ。発注しようにもどこの造船業者も予約で埋まってる状態でな」
「あ~・・・」
俊としては気まずい気持ちになる。
ステーションの造船業者はどこも星系軍から発注された船を造っているはずだった。
「申し訳ない。そちらのことを考えていませんでしたね」
「いや。お前さんが謝ることじゃないさ。とはいえ、何とかならないもんかとな」
「そうですね・・・。少し待ってくださいね」
俊は明石に連絡を取る。
「明石。ちょっと来てくれるかな?」
「わかったのです」
しばらく待っていると明石がやってくる。
「お待たせなのです」
「何だこのちっこいのは?」
「明石のアバターですね。ドリトルさんのヴィービルと同じような存在です」
「へぇ・・・。って俺が聞いてよいことだったのか?」
完全独立型のAIは機密の塊のような存在だ。
「オズマさんは言いふらすような真似はしないでしょ?」
「そりゃぁ・・・。そうだが・・・」
「明石。冒険者の人達が船を欲しがってるんだけどどうにかならない?」
「少し待つのです」
明石はそう言うと固まったように静止する。
「おい。大丈夫なのか?」
「多分・・・」
「お待たせなのです。工作機でパーツを組み立てて後で組み合わせる方法なら大量生産が可能なのです」
「詳しいデータをくれるかな?」
「今、送るのです」
俊は送られてきたデータを確認する。
現在の船の造り方としては1艦1艦ドックで丁寧に造船している。
だが、明石の提示してきた方法はパーツを別々に造り、後で組み合わせる方法だ。
この方法であれば規格さえあえば様々にカスタマイズも可能だ。
実際に基本装備としてのレーザーに加えオプションとしてミサイルや魚雷なども選べるようになっている。
性能としては俊が保有している駆逐艦よりも劣るが冒険者が持つ船としては十分な性能を有している。
「オズマさん。どうですか?」
「ふむ・・・。安全性が確保されているなら・・・」
「その辺も大丈夫なのです。中央の艦橋部分が非常脱出用の小型艇を兼ねているのです」
改めて俊は中央の部分を確認する。
長距離の移動は無理だが短距離なら高速で動くことも可能となっていた。
「大量生産するとして・・・。これぐらいですかね?」
「ふむ。思ったより安いな。これなら連中も納得するだろう」
オズマは提示した金額に頷いてくれた。
俊は工作機の一部に指示を出して冒険者用の船の造船を開始した。
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