第161話

今、俊の目の前にはステーションを支える企業のお偉いさん方が鎮座している。

「領主様は我々に喧嘩を売っているのか?」

「喧嘩?何を言っているのかわかりませんね」

「何を白々しい。我々の製品と被るような工場を作っておいて・・・」

「領民の生活に必要な物を作っているだけです。一部の企業に頼りきりでは何かあった際に困りますから」

「それを喧嘩を売っていると言っているのだ。我々がどれだけこのステーションの為に尽くしてきたか・・・」

「どの口がそう言うのか・・・。散々不正を働いてきて開いた口が塞がりませんね」

「それは・・・」

俊としてもここは引く気はなかった。

「ぐぬぬ・・・。貴方とこれ以上話してもどうにもならないようだ」

「そうですか・・・。もう少し冷静な方達だと思っていましたが違ったようですね」

「失礼する」

そう言うと企業のお偉いさん達は足音荒く部屋を出ていった。

「俊様。お疲れさまでした」

「ふぅ・・・。あんな感じでよかったんですか?」

「お見事でした。一部の企業に頼りきった状態というのは危険です。リスクを分散させておくのは基本です」

「従業員をどうするか悩んでいましたけどヴィレッタさんのおかげでクリアできましたからね」

「そうですな・・・」

領主主導の工場ではヴィレッタから預かった人達に働いてもらう予定だ。

後は希望者がいれば元々住んでいた人達も受け入れる。

生産された商品についてはステーション内で販売される他、交易品として輸出される予定だ。

企業がこのまま何もしなければ潰れる可能性もあるがそこは長年、商売してきたのだ。

何とかするだろう。

最悪の場合は買収するという手もある。

安くはない出費だが長い目で見ればプラスになるだろう。

「予定より早く終わりましたので休憩しますか?」

「いえ。先方がもう来ているなら通してください」

「わかりました」

次の面談相手は冒険者組合だった。

「失礼する」

「オズマさん・・・?久しぶりですね」

「久しぶりだな」

「職員が来るものと思ってましたが・・・」

「面識があるなら行ってこいって組合長に押し付けられた」

「商売の方は順調ですか?」

「おかげさまでな。輸送依頼に護衛依頼。選び放題だ」

「冒険者組合があってこちらも助かっています。手持ちの戦力だけでは手が足りませんから」

「そこはお互い様だな」

「それで要望があるとのことでしたが?」

「単刀直入に頼む。船を売ってくれ」

「船をですか・・・?」

俊はオズマの話を詳しく聞くことにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る