第158話

マーチェと熱い夜を過ごした俊は目を覚ます。

隣を見たがマーチェの姿はもうなかった。

その代わりキッチンの方からいい匂いが漂ってきている。

着替えてキッチンを覗けばマーチェが朝食の準備をしていた。

「俊様。おはようございます」

「おはよう」

「もう少し待ってくださいね。すぐに出来ますから」

宣言通り少し待っていると朝食が運ばれてくる。

朝食のメニューはトーストされたパンにベーコンエッグ。

そしてコーンスープだった。

「美味しそうだね。明石を呼んでくるよ」

「はい。お待ちしています」

俊はノックしてから明石の部屋に入る。

「明石。朝御飯だよ」

「わかったのです」

明石はプラモデルを組み立てる手を止めてすぐにやってくる。

ちらっと見るともうすぐ完成のようだ。

「マシター。早く行くのです」

明石に手を引かれる形で席に着く。

「いただきます」

トーストもちょうど良い焼き加減で口に含めばサクッと良い音たてる。

カリカリに焼かれたベーコンエッグもほどよい味付けだ。

「美味しいのです。マーチェは良いお嫁さんになるのです」

「そう言っていただけると頑張ったかいがありますね」

マーチェは嬉しそうに微笑む。

その破壊力は抜群だった。

「俊様。どうかしましたか?」

「いや。なんでもないよ」

ここで素直に言葉に出来れば良いのだろうが経験値の足りていない俊は誤魔化すように食事を続けた。




俊達はまずは執務室に向かい急ぎの書類を片付ける。

それが終わったらドックに向かい用意されていた宇宙船に乗り込む。

本日の予定では新生された星系軍の視察を行うことになっていた。

新生された星系軍の評判は悪くない。

少し前までは不正を働く上位者のせいでまともな活動ができていなかったがそれもなくなり地道に治安維持活動を行っている。

不正を働いていたのは企業も同じでそういった企業には行政機関による摘発も行われていた。

とはいえ、企業を潰すわけにもいかず罰金と行政指導にとどめるように指示を出している。

世間では処分が甘いなどと言われたりしているが企業を潰せば大量の失業者が出たり経済活動に支障をきたすので仕方ない。

領主として企業に頼った運営は避けたいところだがこの短期間でそこまでの改善は難しかった。

将来的には企業の影響を受けない体勢作りというのもしていきたいところだ。

建設中の食料プラントはその第一歩となるだろう。

食料事情が安定したら他の製品の工場なども増やす予定だ。

まだまだ俊の治める星系は発展の余地を残していた。

それは父であるカールが最低限の統治で済ませていたことによる。

子供の成長の為に宿題を用意したと言えば聞こえはいいが面倒だっただけであろう。

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