第157話

俊達はその後も工場などを視察した。

そこでも明石は問題点を挙げ改善策を提示し続けた。

工作艦として必要な物を効率よく作る為に仕入れた知識だと明石はどや顔で胸を張っていた。

「今日は助かったよ」

「いえ。マシターのお役に立てて嬉しかったのです」

「明石ちゃん。何か食べたいものはある?」

「ハンバーグプレートを食べてみたいのです」

「わかったわ。帰りに材料を買っていきましょうね」

この発言からもわかるように本日の夜のお相手はマーチェである。

どうやら夕御飯を作ってくれるようだ。

「付き合うよ」

「助かります」

俊とマーチェに明石は食材を求めてお店に向かった。

お店には様々な食材が揃えられており明石はあっちにいったりこっちにいったりとふらふらしていた。

「明石。欲しいものはある?」

「色々食べてみたいけど悩むのです」

最終的に明石はフルーツの飴と金平糖を選んだ。

「それだけでいいの?」

「後のは今度来たときのお楽しみに取っておくのです」

「そっか・・・」

明石の働きからすればもっと我儘を言ってくれててもいいのだが本人が納得しているなら口を出すようなことではないだろう。

俊達は真っ直ぐに家に帰る。

「ご飯が出来るまで待っていてくださいね」

「わかった」

俊は隙間時間に電子書籍を開いて読書を開始した。

今読んでいるのは物語とかではなく経済学についての参考書である。

経験の足りていない俊にとって先駆者の知識というのは大変助けになっている。



しばらくすると肉の焼ける匂いが漂ってくる。

自室でプラモデルを組み立てていたはずの明石が待ちきれないというばかりにキッチンの方を真剣な眼差しで見ていた。

尻尾があればブンブン振っていそうなイメージだ。

「明石ちゃん。もうちょっと待っててね」

「わかったのです」

「明石こっちにおいで」

「マシター。お邪魔するのです」

明石はそういうと俊の上にすっとんと座る。

俊は明石の頭を優しく撫でる。

「へへへ」

明石は嬉しそうに笑顔を浮かべている。

独立したAIとしてその頭脳は人間をはるかに凌駕するが誕生してからまだあまり時間が経っていない明石は子供のようなものなのかもしれない。

「お待たせしました。ご飯ができましたよ」

「任せちゃってごめんね」

「いえ。これも淑女のたしなみですから」

完成したハンバーグプレートはとても美味しそうにみえる。

マーチェは良いところのお嬢様であるが作りなれているようだ。

事実、マーチェは花嫁修行の一環で一通りの料理を習っていた。

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