第156話
「おはようございます」
「俊様。おはようございます。本日より補佐として復帰します」
「わかりました。よろしくお願いします」
「明石も頑張るのです」
昨日と同じように明石には重要度の低い書類をまわす。
重要度が下がるとはいえ大事な仕事には変わりない。
滞れば領民の生活に影響が出てしまう。
マーチェの手伝いもあり昼前には優先すべき仕事に目途が立った。
「俊様。午後からはステーションを視察してみてはいかがですか?」
「視察ですか?」
「実際に現場を目にして問題点がないか探すのです。それに働いている人々の士気向上にも繋がります」
「なるほど。確かに書類上では見つからない問題点もありそうですね」
俊達は昼食を食べた後、ステーションの視察に向かった。
まず一番最初に向かったのは食料プラントの視察だ。
食料プラントでは野菜や主食となる穀物を水溶栽培している。
病気などの心配はないが、ここで作られている野菜や穀物はどうしても一級品と比べると味が落ちるといわれている。
それにこうした設備で作られた野菜や穀物を買えるのは富裕層だけだ。
一般の人々は食べられない部位を加工して作られた合成品を購入するしかない。
「ん〜・・・。一般の人達の食料事情を改善する必要がありそうですね」
「俊様。言うのは簡単ですが実現は難しいですよ?」
「明石はどう思う?」
「見た感じ無駄が多いのです。任せてくれるなら改善案を出せるのです」
「改善案を見せてくれるかな?」
「今データを送るのです」
送られてきたデータを確認する。
「う〜ん・・・。このデータを信じるなら一般の人達も買える価格になりそうだけど、ここを止めるわけにはいかないよね?」
「そうですね。でも、食料は余れば他に売りに出せばいいですし新設してもいいのでは?」
「なるほど。新設してそちらが稼働したらここを改良すれば・・・」
「悪くない案ですな。さっそく手配しますか?」
「お願いします」
次は食肉の製造プラントを視察する。
食肉の製造プラントでは育てるのではなく培養する形式で食肉を作り出していた。
「ここも無駄が多いのです。ここは設備はそのままでも培養液を改良するだけでもっと効率よく生産ができるようになるのです」
「いきなり全てを変えるのは難しいから4分の1だけ変えてみようか」
設備を管理している部署に通達を出す。
職員というより研究者は嫌そうな顔をしている。
いきなり領主がやってきて自分達の仕事に口を出してきているのだからその気持ちがわからなくはない。
だが、領民の為になるなら研究者に嫌われるぐらいは甘んじて受け入れよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます