第154話

明石がゲームセンターで気に入ったのはクレーンゲームだった。

狙っている景品は可愛らしい人形とかでなく軍艦のプラモデルだ。

恐ろしいことに明石は数回プレイしただけでコツをつかんだようで、順調に景品の山を築いている。

店員の方を見れば青い顔をして震えているがズルをしているわけではない為、見守るしかできないようだ。

「明石。少し早いけど移動しようか?」

「どこにいくのです?」

「プラモデル組み立てるんでしょ?専用の道具も必要かなって」

「買ってくれるのです?」

「うん。どうせなら一式揃えちゃおう」

プラモデル専門のお店に向かうと明石は興奮した様子でお店に突撃していく。

俊が追い付いたときには商品をカゴいっぱいに入れていた。

「ゲームセンターには置いてなかったのもあるけど買う?」

「欲しいですけどまずはゲットした子達を組み立てるのです。組み立て終わったら買ってほしいのです」

「わかった」

プラモデルの専用の道具を一式揃えたわけだが思ったより高くついた。

まぁ、明石がこれで喜んでくれるなら安いものか。

俊は両手に荷物を抱えて家に戻る。

「ただいま」

「おかえりなさい。明石ちゃんも一緒だったのね」

「お邪魔するのです」

「取りあえず荷物を置いてくるね」

領主が住む家としてこの家はかなり広い。

使っていない部屋がいくつもあるのでそのうちの1つに明石を案内する。

「この部屋は好きに使ってくれていいからね」

「わかったのです」

「荷物も置き終わったしご飯にしようか」

「楽しみなのです」

明石達、独立型のAIは食事をする必要はないが娯楽として食事を取ることもできる。

食卓に向かうと楓が料理を運んでいるところだった。

「手伝うよ」

「ありがとう」

2人でてきぱきと配膳を済ませ席に着く。

楓が用意してくれたのは焼き魚に卵焼き。

サラダに豆腐とワカメの味噌汁。

そして白米だった。

「美味しそうなのです」

「さっそく、頂こうか」

「いただきますなのです」

明石は真っ先に焼き魚に手を伸ばす。

うまく食べるのは難しいはずなのだが明石は器用にほぐして食べている。

「美味しいのです」

「そう。お口に合ったようでよかったわ」

俊も味噌汁を一口飲む。

「はぁ・・・。やっぱり食べなれた料理は落ち着くね」

宇宙に出てから食事には困っていなかったがそれでも食べなれた料理が一番しっくりする。

技術的には栄養を取るだけならもっと優れた物はいくらでもある。

それでも、手間をかけて食事を作り食べる。

人間というのはどれだけ技術が進歩しても変わらないらしい。

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