第153話

明石を連れて執務室に戻ってきた俊とマーカスは仕事に取りかかった。

「マシター。お手伝いするのです」

「それじゃ。これを仕分けてくれるかな?」

明石に重要ではない電子データを渡してみる。

「終わったのです」

明石に電子データを渡してから10分も経っていない。

「もう?」

「こんなデータ、戦場でのデータ処理と比べたら余裕なのです」

「明石って戦闘艦じゃないよね?」

「明石は工作艦なのです。でも、最前線で戦線を支えるために自衛用の装備とかはあるのです」

「例えば?」

「近接防御用の機銃に連射性に優れたレーザーとかなのです」

改めて改装された明石のデータを呼び出して確認してみる。

確かに以前はなかった武装がいくつか配備されていた。

「他にも言ってないことがあるんじゃない?」

「ふふふ。マシター。女の子は秘密が多いのです」

どうやら隠していることはあるらしい。

仕様書をくまなく見ればわかるかもしれないが今は仕事中である。

そんなことをしている時間はない。

「まぁ、危なくなければいいか・・・」

「そこは安心してほしいのです。安全マージンは十分取ってあるのです」

「さて・・・。時間まで頑張るとしますか」

俊とマーカスに明石は終業時間まで黙々と書類を片付けていった。

「マシター。お疲れさまなのです」

「明石もお疲れさま。手伝ってくれたおかげで仕事がはかどったよ」

「どういたしましてなのです。マシターにお願いがあるのです」

「何だい?」

「ゲームセンターって所に行ってみたいのです」

「ゲームセンターに?」

「ヴィービルちゃんが遊びも大切だと言っていたいのです」

「なるほど・・・。あまり時間は取れないけどそれでもいいかな?」

俊のこの後の時間は埋まっていた。

今朝、逃げるように去る間際に楓から夕食を作って待っているといわれていたのだ。

「構わないのです」

それでも明石のために2時間ぐらいなら時間を使っても構わないだろう。

それに改装中で動けなかったとはいえハーリー星系の統治の為に放置するような形となってしまった。

必要だったとはいえ寂しい思いをさせたのは間違いない。

「マシター。早く行くのです」

「ゲームセンターは逃げないよ?」

「遊ぶ時間が減るのです」

「わかったよ」

仲良く手を繋いでゲームセンターに向かう俊と明石はまるで親子のようであった。

独立型のAIにとってマスターとのコミュニケーションは大切である。

どう成長するかは接し方で変わってくる。

俊との時間は明石にとってとても重要な物であった。

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