第150話

俊が女性陣の相手をしている頃、海賊艦隊を率いていた不死身のヴィレッタの元に差出人不明の荷物が届いた。

「罠はなさそうだね・・・」

ヴィレッタが荷物を開くとそこには1通の手紙が入っていた。

かつては当たり前のように見ていた封印を見てヴィレッタは苦笑いする。

銀河帝国艦隊に動きを悟られないように動いたつもりだったがこれが届いたということは動きが筒抜けだったのだろう。

手紙にはヴィレッタの身を案じていることと謝罪が書かれていた。

ヴィレッタとすれば差出人であるアルシェントに恨みは持っていなかった。

ヴィレッタはかつてアルシェントの率いる親衛艦隊の座乗艦の艦長だったのだ。

アルシェントが去ったことで他の皇族達はヴィレッタ達を吸収しようと躍起になった。

信念のもとそれを断った者も多かった。

その結果、起こったのが粛清だ。

ヴィレッタもその中に含まれており、信頼の置ける部下と共に銀河帝国艦隊を離れることになった。

その後、理不尽な目に遭っている民を助けていたら名の知れた海賊になっていた。

手紙の続きを読む。

驚いたことにアルシェントはこの短い期間でヴィレッタの罪を調べ上げ無罪になるように動いていたようだ。

そして贈り物はそれだけではなかった。

アルシェントの親族によって取り上げられた爵位の再授与だった。

与えられた爵位は男爵だった。

爵位を失ったものが爵位を得ることはほとんど不可能だ。

アルシェントは位の低い爵位しか用意できなくてごめんなさいと書いているがこの爵位を与えるためにかかった苦労を考えれば申し訳ないぐらいだ。

ちなみにヴィレッタのかつての爵位は侯爵だった。

爵位を受けとる条件として銀河帝国艦隊としての仕事も書かれていた。

独立遊撃艦隊。

やる仕事としては宇宙海賊の討伐や宇宙生物への対応だ。

それがアルシェントがヴィレッタに求めた役割だった。

宇宙海賊として生活していくのは大変だ。

ヴィレッタは配下や非戦闘員の今後のことを考えて男爵位を受けとることに決めた。

ヴィレッタは箱を開けて装置に血を垂らす。

装置は問題なく起動して認証が行われた。

これでヴィレッタは銀河帝国の男爵と認められることになる。

ヴィレッタは自室から出ると高らかに宣言した。

「今日からは宇宙海賊は廃業だ。お前達カタギに戻るぞ」

「えっと。姉さん。それってどういう・・・?」

「細かい話は後だよ。宴だ。宴」

この日ヴィレッタ達は備蓄食糧や貴重なお酒を解禁して大いに飲んで歌って騒いだ。

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