第148話

俊は持てる戦力を総動員して海賊艦隊と対峙した。

海賊艦隊の中でも派手な船から通信が送られてくる。

「領主様、自らお出迎えとは恐れ入るね」

「貴女は?」

「私はヴィレッタ。今回の指揮を任されたもんさ」

ブリッジ要員がぼそっと言葉を漏らす。

「不死身のヴィレッタ・・・」

「おやおや。アタシを知っている人がいるなんて嬉しいねぇ」

「どうやら有名人のようですね」

「絶望的な状況からも生還することから付けられた異名です」

艦長が補足するように説明してくれる。

「アタシは生き残るために足掻いているだけさ」

「それで目的は?」

「何。ほんの少しあたいらが資源を採取するのをお目こぼししてくれればいいのさ」

「なるほど。ですがそういうわけにはいきませんね」

「どうしてもかい?」

戦力差は絶望的だ。

海賊艦隊の数は多くこのまま戦えば全滅するだろう。

それでも引くわけにはいかなかった。

「貴女方に資源を渡せば新たな被害者が生まれるでしょう。それがわかっているのにはいどうぞというわけにはいかないでしょう」

「くくく・・・。あはは。肝っ玉のすわった小僧じゃないか。気に入ったよ」

どうやら俊はヴィレッタに認められたようだ。

「その様子なら他の派閥に流れることもないだろう。それがわかっただけよしとしようじゃないか」

「他の派閥?」

「あたいら海賊も一枚岩ってわけじゃないのさ。利権を巡って海賊同士で争うこともある」

「海賊の世界も複雑なんですね」

「あんたがそれをいうかねぇ・・・」

「えっ・・・?」

「マーキュリー公爵家の跡取りで皇族だ。あんたに手を出せばマーキュリー公爵家を敵に回す。その上で皇家の鬼姫に狙われることになる。後先考えればそんなのはごめんだよ」

父であるカールと母であるアルシェントは海賊に驚異を与えるほど恐れられているようだ。

「そんなにですか?」

「ここだけの話、アルシェントは一度敵認定したら相手を殺すまで止まらないじゃじゃ馬だからね」

俊としては苦笑いするしかない。

昔からやられたら倍返しだ!を地で行く人だったからだ。

頼もしい一方でやりすぎて何度トラブルに巻き込まれたことか。

「ずいぶん詳しいんですね」

「これでも昔は正規軍にいたのさ。色々あって今じゃ海賊だけどね」

人に歴史ありというがヴィレッタも色々あったらしい。

ちょっと聞いてみたい気もするがここで聞くのも野暮だろう。

「さて。あたいらは行くが頑張るんだよ」

そう言って海賊艦隊は進路を変更して去っていった。

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