第147話

「マーカスさん。お疲れさまです」

「俊様。もうよろしいのですか?」

「はい。おかげで疲れが取れました」

「では、私では決済のできない書類をお願いします」

次々とデータが送られてくる。

俊はその書類を読んでから可・不可・再提出と割り振っていく。

1週間、仕事をしていなかっただけなのに処理しなければならない書類は山のようだった。

これでマーカスがいなければもっと書類の量は増えていただろう。

黙々と書類を片付けている俊の元に親衛隊が訪ねてくる。

「俊様。お仕事中、申し訳ありません」

「何かありましたか?」

「勉強のお時間です」

「勉強?」

「はい」

そう言えば試験が終わったときに補習を受けてもらうといわれていた。

「今じゃないと駄目ですか?」

決済待ちの書類はまだまだある。

急ぎの書類が終わったところであるがそれでも放り出すわけにもいかないだろう。

助けを求めるようにマーカスの方を見る。

マーカスは良い笑顔で頑張ってください。

と言っていた。

どうやら助けてはくれないようだ。

「わかりました」

俊は逃げられないのを悟り親衛隊にドナドナされていった。

親衛隊の面々は必要になる知識をわかりやすく説明してくれる。

終わり際、これ読んでおいてくださいねと渡された教材には「猿でもわかる兵士講座」と書かれていた。

執務室に戻り少しでも書類を片付けるために時間ぎりぎりまで政務に励む。

就業時間が終われば自室に戻り夕食を取りつつ渡された教材に目を通す。

猿でもわかる兵士講座と銘打っている通りかなりわかりやすく書かれていた。

そして、驚くことにこの教材は手書きである。

俊の為にわざわざ作ってくれたのだろうか?

だとしたら申し訳ない。

期待に応えるためにもしっかりと勉強しなければ。

何とか読み終えて就寝する。

翌日からも政務→補習→政務→勉強のサイクルを繰り返す。

そして、1ヶ月が経ち確認のためにテストを受けて無事合格点を獲得した俊は胸を張ってスターズ保持者を名乗ることを許された。

ちなみにであるが領主でもスターズの称号を持っている者はほとんどいない。

それぐらいスターズの資格を取るのは厳しいのである。

1ヶ月で艦隊の補修も終了し無事に戦力を整え直すことに成功していた。

これでハーリー星系は十分な戦力を確保したことになる。

だが、体勢を整えていたのは俊達だけではなかった。

ハーリー星系外周を警戒していた哨戒艦から緊急通報が届いたのである。

それは大規模な海賊艦隊の来襲であった。

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