第145話

「状況終了。各自、集合せよ」

試験官の声でシミュレーターに参加していた面々が集合する。

「まずは、ミッション達成おめでとう」

「ありがとうございます」

「が、犠牲者が出たな?」

「申し訳ありません。指揮官である私の実力不足です」

軽巡洋艦を操っていた兵士がそう謝る。

「いや。君は十分よくやった。命令違反を犯した奴が悪い」

俊がとった行動は軍隊としては褒められたことではない。

完全な独断専行だ。

俊はすぐに謝罪する。

「申し訳ありません」

「そもそも、なぜあの攻撃に気が付いた?」

普通であればあのような攻撃に気づいて対応など不可能だ。

「以前、似たようなケースがありましたので」

俊は明石が組んだ課題の中で似たようなケースがあったのを思い出す。

「なるほどな・・・。まぁ、全体責任だ。全員、罰を受けてもらう」

「了解であります」

全員が元気よく返事をする。

「許可が下りるまで走り込みをしてもらおうか」

「はっ!」

俊達はすぐに走り込みを開始した。




「おいおい。領主様を少し舐めていたな」

「そうだな」

現在、試験を監督する親衛隊の面々は緊急で話し合いをしていた。

問題なのはシミュレーションの結果だ。

普通ならまず海賊艦隊に奇襲を受けて少なくない被害が艦隊に出る予定だった。

それが、俊の作戦で切り抜けてしまった。

そのままでは、試験として意味がない。

そこで、急遽、遠距離射撃を追加したのだ。

だが、それも俊が謎のカンを発揮して防いでしまった。

スターズの試験では何かと理由をつけて候補生を追い込むのが目的なのだ。

無理矢理、難癖をつけて罰を与えたがそう何度も使える手ではない。

「とにかく、難易度の高い課題を考えるぞ」

「そうだな。簡単にクリアさせるわけにはいかん」

こうして俊達の知らないところで課題の難易度が上がることが決定した。




俊はなんとか兵士達に混ざって必死に走っていた。

ここまで体を酷使したことはない。

ペース配分などしている余裕は勿論ない。

少しでも遅れれば電気鞭の餌食になってしまう。

だが、俊は気づいていないことだが、ここまで兵士達についていけるのは接種したナノマシーンのおかげだった。

ナノマシーンは病気の予防はもちろんのこと筋肉の再生や疲労回復効果を高めてくれる。

試験が終わった頃にはかなり身体能力が底上げされることになるだろう。

領主としてはそこまで体力が必要になるパターンは少ない。

だが、体が資本であることにはかわりない。

監督している親衛隊の面々は手加減するつもりなどなかった。

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