第144話

銀河帝国艦隊では通常、単艦行動は認められていない。

これは不測の事態に陥った場合、乗組員を迅速に救助する為だ。

だが、今回はあえて単艦行動を申請した。

ペアで行動した場合、敵勢勢力に発見されるリスクが上がるからだ。

現在、俊の操る駆逐艦は最低限の生命維持機能以外は全てカットされている。

どれぐらい効果があるかはわからないがこうすることで少しでも発見される可能性を下げたかったのである。

目標地点に到達した俊はすぐに機雷を設置する。

それが終わってからダミーのドローンを配置する。

ダミーのドロンは疑似電波を発信して艦隊が接近している振りをする。

俊はただ、相手の反応を待つ。

時は刻刻と過ぎていき杞憂だったか?と思ったころ怪しいと思っていたポイントから熱源反応をキャッチする。

輸送艦を狙った海賊のお出ましである。

海賊艦隊は俊が設置した機雷に突っ込んでいく。

機雷は休眠状態からアクティブに切り替わり複数の海賊艦を巻き込んで爆発した。




「艦隊司令よりB1086へ。ただちに離れ本隊に合流せよ」

「B1086。了解。本隊に合流します」

俊は全システムをフル稼働させ本隊への合流を急ぐ。

機雷のおかげで先制できたが、それでもまだ海賊艦隊の方が数が多い。

この場に残っても殲滅されるだけだ。

本隊は守るべき輸送艦を少し後方に置き軽巡洋艦を中心に防御陣形をとっていた。

俊もその中に迅速に合流する。

海賊艦隊は混乱は見られたもののすぐそこに迫っていた。

「脅威度の高い順に各艦攻撃せよ」

旗艦である軽巡洋艦から攻撃指示が飛んでくる。

今回の襲撃では駆逐艦クラスが2隻混じっていた。

他は民間船に毛が生えた程度の改造艦だ。

駆逐艦クラスの海賊艦に少し手間取ったがそこからは一方的な展開となった。

海賊艦隊はあっという間に駆逐され宇宙の藻屑となる。

後は輸送艦を目的地まで護衛するだけ。

だが、俊は何となく嫌な予感がした。

独断で艦列を離れ独自の判断で動く。

「おい。何をして・・・」

その声は最後まで聞こえなかった。




ブーブー。

貴方は撃沈されました。

そうアナウンスが流れる。

これがシミュレーションでなければ俊は死んでいたことだろう。

俊はシミュレーターを動かして状況を確認する。

超遠距離射撃。

俊がやられたのはこれだった。

幸い、超遠距離射撃は条件が難しい。

データを送っていた海賊艦隊も壊滅したので次弾はないだろう。

その隙に体勢を立て直した輸送艦隊は目的地に無事到着した。

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