第143話
「いやぁ。領主様。凄いっすね」
そう言って兵士達が話しかけてくる。
「何度、死んだと思ったことか・・・」
「正直、予想外です。自分達が仕える相手がどんな人か見極めたかっただけなんですけどね」
なるほど・・・。
何故、兵士達が自分に試験を受けてほしいといったのか納得である。
「それで、僕は合格ですか?」
「いやいや。まだ1日目ですよ?もっと、頑張ってもらわないと」
「鋭意努力します」
俊としてはスターズの試験を合格する必要はない。
だが、領主として認めてもらえるように少しでも努力すべきだろう。
彼等の思惑が楽をしたいのだとしても。
「全員、起床!これより夜間行軍を行う」
試験官はそう声を張り上げる。
就寝してまだ、30分ぐらいしか経っていない。
睡眠時間を与えると言われておかしいとは思ったがその理由がこれである。
包まっていた毛布を手早く片付け荷物を背負う。
正直、これなら寝ていない方がよかった。
中途半端に睡眠をとったことで逆にしんどい。
それが目的なのだろうが・・・。
愚痴を言っていても仕方ないので荷物を担ぎ行軍に参加する。
片付けが遅れて電気鞭の餌食になっている者もいるが気にしないことにする。
というか、気にしている余裕がない。
他の兵士達と違ってほとんど休憩が取れていないのだ。
これでまたあの電気鞭を喰らえば体力を大きく消耗する。
そうすればいつ脱落してもおかしくない。
地獄を見るのはごめんである。
歩き始めて5時間が経過した。
「よし。行軍止め。これより、諸君にはシミュレーターを使っての艦隊行動をとってもらう。役割はこちらで割り振ったのでそれに従うように」
「はっ!!!」
シミュレーター訓練なら俊にも活躍の場があるだろう。
それに、椅子に座れるのがここまで幸せに感じるとは思っていなかった。
俊に与えられたのは駆逐艦だった。
どうやら、階級によって操る艦が違うようだ。
与えられたミッションは輸送艦の護衛任務だ。
軽巡洋艦を旗艦として目的地まで輸送艦を守りきるのが目的だ。
俊は星系図を呼び出し状況を把握する。
いくつか気になる点があり、上官役の兵士に意見具申をする。
「なるほど・・・。確かにその可能性はある。が、しばし待て」
どうやら自分では判断できないようで監督官に指示を仰いだようだ。
銀河帝国艦隊の常識で言えば受け入れがたい内容であるのは事実である。
その辺は俊も知識として持っているが今回の場合はそれを曲げてでも実行すべきだと思ったのである。
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