第142話

スターズの試験を行うにあたって問題になったのは監督官である。

だが、それは意外なというか当然の流れで親衛隊の面々が担当することになった。

彼等は皇族を守る為に選抜されたエリートである。

当然、スターズの試験をくぐり抜けた猛者達で構成されていた。

「まず、言っておきます。我々はこれより貴方方を人間として扱いません」

試験開始前に監督官達はそう宣言した。

「まずは持久力を試させていただこう。全員荷物を持って走るように」

試験開始早々、持久走がはじまった。

俊としても運動音痴というわけではないが、ただの高校生だったのだ。

荷物を持った状態で鍛え上げている兵士達についていけるわけもない。

「そこ。遅れているぞ」

そう言って試験官は鞭をふるってくる。

ただの鞭ではない。

耐えられるぎりぎりの電圧がかかっている電気鞭である。

最初の犠牲者はもちろん俊であった。

俊は恐怖でひたすら走る。

参加者達も全員あんなもの食らいたくないだろう。

全員、走るペースをあげる。

俊も必死に走るがそれについていけるわけもなく何度も電気鞭で打たれることとなった。




「はぁはぁ・・・。死ぬ。死んでしまう」

「そこ。何か言ったか?」

「いえ、何でもありません」

現在は持久走を終え、わずかな休憩時間だ。

少しでも体力を回復しなければ脱落してしまう。

ここで俊はマーカスに渡されたエルフの秘薬を服用する。

すると疲れがすーっと引いていく。

まるで魔法の薬である。

「さて、続いては知識を問わせてもらおう。端末に試験問題を送信した」

疲労している状態でのテストである。

普段は間違わない問題でも間違う可能性がある。

人とは極限状態に追い込まれると無意識に間違う生き物なのである。

まぁ、俊は軍人としての教育を受けたわけではない。

普通にわからない問題だらけであった。



「よし。そこまで、点数に応じてペナルティーを受けてもらう。間違った問題数×時間、持久走だ」

端末に結果が送られてくる。

俊の結果は散々な物だった。

「はぁ・・・。これだけ間違えるとはむしろ才能があるな。そんなに走りたいなら好きなだけ付き合ってやろう」

「ははは・・・」

俊は乾いた笑いをするしかなかった。

「脱落するのは・・・?」

「認めん。脱落するというなら地獄を味わってもらおう」

「ですよね~」

俊は諦めて走る選択をした。

何度も電気鞭の餌食になりながら俊は走り続けた。

参加した兵士達は無言で手を合わせていたという。

領主様の犠牲で我々は休憩できると。

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