第133話

俊はエルフィンドの両親であるマーカス・アピスとエラント・アピスに呼び出されていた。

「わざわざすまないね」

「いえ。せっかく再会できたのにエルフィンドを駆り出してしまってすみません」

「いや。それはいいんだ。あの子の性格からするとじっとしているなんて苦痛だろうからね」

エルフィンドはお嬢様ではあるが突撃が大好きな暴れ馬である。

「それで、お話とは?」

「うむ。君さえよければ我が家と同盟を結ばないか?」

「同盟ですか?」

「人材で困っているのだろう?少しでも手助けになればと思ってな」

「それはありがたいですが、よろしいのですか?」

「貴方。本当のことを言いなさいな」

「ああ・・・。君の母君であるアルシェント様には借りがあってね」

「借りですか?」

「あの方は、我々では手の出せない場所に連れ出された同胞や精霊を助けてくれてね」

「もう二度と会えないと思っていた家族が助けられたのです。多くの者が感謝しています」

「ならば、母にそのことを伝えればいいのでは?」

「もちろん伝えたさ。だが、あの方は自身ではなく息子に力を貸してほしいとおっしゃられてね」

「母らしいですね」

昔から、俊に対して母であるアルシェントは甘いところがあった。

「それで、受けてくれるかね?」

「受けなければそちらの顔も立たないのでしょうね」

貴族とはプライドの生き物だ。

この申し出は受けるしかないだろう。

「そう言ってくれると助かる。手始めとして文官と艦隊を派遣させてもらおう」

文官の数もそうだが、戦力が圧倒的に足りていない。

優秀なアピス公爵家の艦隊が加わってくれるならかなり助かるのが本音だ。

「ありがとうございます」

「それと同時に、一部の同胞を受け入れてくれると助かるな」

「そうね・・・。外に出たがっているのはエルフィンドだけではないものね」

どうやら冒険心のあるエルフはエルフィンドだけではないらしい。

「環境が変わればストレスになりませんか?」

「その可能性はあるが、現実を見せるという意味もある」

エルフの社会では何かをしなければいけないということはない。

家に引き籠っていても生活に困るというのはないと聞いている。

「寿命が長いというのは必ずしもいいことではないわ。エルフの古い言葉に生きているのに死んでいる。という言葉があるの」

「なるほど・・・」

地球でも働かないニートというのが大問題になっていた。

親はいつまでも生きているわけではない。

だが、社会に適合できなかった人々はどうすればいいのかわからないのだ。

仕事はいくらでもあるのだ。

体験会のようなものをやってみるのもいいのかもしれない。

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