第132話

「そう言えば、宇宙生物は倒したけど回収はどうするの?」

今回は輸送艦などは連れてきていなかった。

「あぁ・・・。その辺は問題ありませんよ。手配済みです」

マーチェがそう言うのと同時だった。

惑星雪風方向から大船団が近づいてくる。

「予定通りですね。今回は、冒険者組合に依頼して一気に輸送する計画です」

船別表示を見れば俊の所有する大型輸送艦なども含まれている。

それだけでなく親衛艦隊も混ざっていた。

「もしかして、親衛艦隊が付いてくるのを止めた理由って・・・」

「はい。冒険者組合の戦闘艦が足りていませんでしたので」

俊達も冒険者組合の戦力増強には力を入れている。

だが、大幅な借金をしてまで駆逐艦を購入する人というのは少ない。

なので中々、戦力を増強できていない状況だった。

「俊様。この後は、親衛艦隊に移ってください」

「マーチェ達は?」

「このまま、次の宇宙生物を倒しに行きます」

予測できたことではあるが、この機会に宇宙生物を徹底的に狩る方針のようだ。

「了解。無茶はしないようにね」

「はい。俊さんも頑張ってくださいね」

その言葉の意味するところを理解できた。

短時間とはいえ、決裁をしないといけない書類は山のように増えていることだろう。

マーチェが抜けた状態でそれと向き合わなければならない。

今から気分は憂鬱だ。




親衛艦隊に移乗してステーションに戻ってきた。

そのまま仕事場に向かう。

端末を起動させてみれば決裁待ちの案件がいくつもある。

愚痴を言っていても仕方がないので目を通して処理していく。

いくつか報告書も上がってきていた。

惑星雪風への移民ははじまっており、足りないものの催促や陳情など。

すぐに許可の出せる物は許可を出し、確認が必要な物は担当者を呼び出し詰めていく。

そんなことを繰り返していたらあっという間に終業の時間となっていた。

だが決裁待ちの書類はまだまだ大量に残っている。

一度、休憩を挟み英気を養い再び書類と格闘する。

22時ぐらいになろうかというところで端末が強制的に停止した。

何事かと思って色々弄っているとメッセージが再生された。

「頑張るのはいいですが、休憩はちゃんととってくださいね」

なるほど。

そう言えば、マーチェは休憩も仕事のうちですよとよく言っていた。

オーバーワークをしないようにこんなギミックをしかけていたわけか・・・。

確かに、頑張りすぎて倒れては意味がない。

今日の仕事はここまでにして休もう。

意識はしていなかったが立ち上がると疲労感に襲われた。

俊は手早く食事を済ませお風呂に入りそのまま寝てしまうことにした。

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