第128話

俊は明石とヴィービルに呼び出され建造中の戦艦のドックに来ていた。

「マシターに報告があるのです」

「何かな?」

「信濃ちゃんくるのです」

明石がそう言うと幼い少女が現れた。

「この子は?」

「信濃ちゃんはこの戦艦のAIなのです」

なるほど・・・。

予想はできていたがアバターを作ったらしい。

「マスター。私は信濃。よろしくお願いします」

「うん。よろしくね」

「未完成だった装備や未熟な装備の改良も終わったのです」

そう言って明石は褒めてほしそうにしている。

「苦労をかけたね。ありがとう」

「一応、補足しておくわね」

そう言ってヴィービルが戦艦の戦闘力について説明してくれる。

正直なところ信濃の戦闘能力は手に余る。

主砲は一発で星を破壊できるだけの威力・・・。

防御力もシールドだけで現存する戦艦の主砲を何発も受け止められるだけの性能だ。

不安定であった主動力であるブラックホールエンジンもヴィービルの知識をもとに改良が加えられている。

「さて・・・。造ったはいいもののどうするべきかな・・・」

「マシター。信濃ちゃんはマーチェちゃんに任せるのです」

「マーチェに?」

「マシターは私のマシターなのです。だから・・・」

明石の言いたいこともわかる。

信濃はすごい戦艦だ。

だが、明石としては自分を大事にしてほしいのだろう。

「乗艦を移したりしないから安心して」

「へへ。やっぱりマシターは最高のマシターなのです」

「明石。甘えるのもいいけど大事な話があるでしょ?」

そう言ってヴィービルが明石を促す。

「そうだったのです。マシター。今回、得た技術で明石を改装したいのです」

「それはいいけれど、どこを改装するの?」

「まずは、ブラックホールエンジンを積んでシールドを追加するのです」

「ブラックホールエンジンって・・・。そうポンポンあるものじゃないよね?」

「そこは安心しなさい。新造するわけではないわ。あの技術者達、いくつもブラックホールエンジンを造っていたのよ。それを利用するわ」

「なるほど・・・。資源の収支がおかしいと思ったら・・・」

技術者達はいくつもブラックホールエンジンを造っていたのか。

資源がいくらあっても足りないはずである。

「それと、自衛用の武装も追加したいのです」

工作艦といえど、自衛できるならそちらのほうがいいだろう。

「計画はあるのかな?」

「ばっちしなのです」

そう言って明石は改装計画のデータを送ってくる。

納得できる物もあれば意味不明な武装もある。

「いくつか理解できないのがあるんだけど・・・」

「あぁ・・・。それは古代文明の技術よ。悪いものではないから完成を楽しみにしてなさいな」

ヴィービルがそう言ってくる。

「はぁ・・・。あくまで常識の範囲でね」

「任せるのです」

そう言って明石は鼻息を荒く興奮していた。

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