第122話
「ごっほん」
「あっ・・・。お父様・・・?」
「私もいるわよ」
「げっ・・・お母様」
「げっとはなんですか。げっとは・・・」
「あぁ・・・。改めて自己紹介しておこう。エルフィンドの父であるマーカス・アピスだ」
「母のエラント・アピスよ」
「俊・マーキュリーです」
「ここで立ち話もなんだから、部屋に行こうか」
「はい・・・」
通された部屋は大きく豪華だった。
席を勧められ、着席する。
「俊殿。まずは、娘を保護していただき感謝する」
「いえ、助けられたのは偶然です」
「それでもだ。君が娘を助けてくれたおかげで再びこうして会えた。精霊もそうだが、我々エルフは常に狙われる立場でね」
銀河帝国には残念ながら奴隷制度が存在する。
エルフは長期間若い姿を保つことから奴隷としての価値が高い。
心無い者が助けていた場合はエルフィンドも奴隷になっている可能性があった。
「娘も心を許しているようですし、私からも感謝いたします」
改めてエルフィンドの両親が頭を下げてくる。
「ちょっと・・・。お父様・・・。お母様・・・」
エルフィンドが慌てている。
「隠しても無駄だよぉ。私にはわかるんだからね!」
そう言って胸を張るのは精霊であるリリーだ。
「俊と会った時に、エルフィンドの気を感じたからね」
一心同体というのはそこまでわかるものらしい。
「俊殿に贈り物があってね・・・。出ておいで」
そう言って出てきたのは光る玉だ。
「これは・・・?」
「まだ、意識を持たない精霊の卵のようなものだね。ユグドラシル様から俊殿に渡すようにと頼まれたんだ」
「受け取ってもいいものなんでしょうか?」
「私達にとってユグドラシル様は母であり父なのです。そんなお方が指名するというのはそれだけで意味があります」
俊は悩んだ末に光る玉を大切に抱きかかえた。
「お預かりします」
「どんな子に育つかはわかりませんが、きっと力になってくれるでしょう」
「わくわく。いつもそうだけど楽しみね」
リリーは俊の抱えた光る玉に優しい目線を送っている。
「それでは、積もる話もあるでしょう。僕は失礼しますね」
「ちょっと・・・。置いていかないで・・・」
エルフィンドはそんなことを言っているがあえてスルーした。
エルフィンドは逃げようとしたようだがエラントさんがしっかりエルフィンドの首根っこを捕まえていた。
「俊ぅぅぅぅ・・・」
エルフィンドの声が虚しく木霊する。
後で色々文句を言われそうではあるがこれでいいと思う。
家族と一緒に過ごせるというのはそれだけで幸せなのだから。
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