第121話

宇宙生物狩りに行っていたメンバーが帰還した。

俊は皆の労をねぎらう為にポートへと向かった。

「皆、お疲れ様」

「あっ。俊だ。色々あったみたいだけど元気そうだね」

技術者達の一件は情報回線を通じて報告済みだ。

「いやぁ・・・。まさかあそこまで強硬な手段に出てくるとはね」

「いい社会勉強になったんじゃない?」

そう茶化してくるのはエルフィンドだ。

「否定はできないけど・・・。ちょっとエルフィンド付き合ってよ」

「私だけ?もしかしてデートのお誘いかな?」

「残念ながら違うよ。エルフィンドにお客さんが来ててね」

「客?心当たりがないなぁ・・・」

「まぁ、会えばわかるから・・・」

エルフィンドのご両親は既に到着しており、ホテルに宿泊中である。

「あれ?ここって・・・」

ステーション開発初期に進出してきた銀河帝国ホテルである。

銀河帝国ホテルは誰でも泊めるわけではなく、お客を選ぶ一流ホテルだ。

「なんか、嫌な予感がしてきたんだけど・・・」

「まぁまぁ。そう言わずに。逃げても結果は変わらないから」

俊としても、逃げれるなら逃げたい。

だが、エルフィンドのご両親から笑顔で娘と2人で訪ねてほしいと言われてしまった。

ホテルの従業員に案内されて最上階に辿り着く。

辿り着くと同時にエルフィンドの顔に小型の生物が飛んできた。

「エルフィンドの馬鹿ぁ・・・」

「んっにゅ・・・。リリー・・・?」

小型の生物の正体はおとぎ話で有名な精霊である。

エルフィンドはエルフである。

エルフ達が住まう、母星には世界樹が存在しており、そこから精霊が生まれるのだという。

エルフと精霊は契約を交わし一心同体となる。

当然、エルフィンドにも相棒となる精霊がいたのだ。

だが、冒険者となる為に飛び出したエルフィンドは相棒であるリリーを実家に置き去りにしたのだ。

「もう、私がどれだけ寂しかったか・・・」

「ごめんごめん。でも、どうなるかわからない私に付き合わせるわけには・・・」

エルフィンドとしては相棒を危険に合わせたくなかったのだろう。

精霊は契約者に力を与える。

その力は操縦する宇宙船すらも強化する。

同じ公爵家でありながら軍事力でマーキュリー家が勝てない理由。

それは精霊の強化によるものなのだ。

精霊の力は広く知れ渡っていて、精霊を確保しようと密漁者が後を絶たない。

アピス公爵家は精霊を守るために密猟者に容赦がない。

それでも完全に守り切ることが難しいのだ。

実家を飛び出したエルフィンドはリリーを守りきれないと判断した。

だが、2人の関係をみると一緒にいるのが当然のような気がする。

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